井上尚弥がPFP世界1位をつかんだ衝撃のリターンマッチ 敗れてなお見えたドネアの素晴らしい人間性
2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。
それからわずか1年半、世界王座を計27度防衛し続けてきたアルゼンチンの英雄オマール・ナルバエスは、プロアマ通じて150戦目で初めてダウンを喫し2ラウンドで敗れた。「井上と私の間に大きな差を感じたんだよ……」。
2016年、井上戦を決意した元世界王者・河野公平の妻は「井上君だけはやめて!」と夫に懇願した。
WBSS決勝でフルラウンドの死闘の末に敗れたドネアは「次は勝てる」と言って臨んだ3年後の再戦で、2ラウンドKOされて散った。
バンタム級とスーパーバンタム級で2階級4団体統一を果たし、2024年5月6日に東京ドームでルイス・ネリ戦を控えた「モンスター」の歩みを、拳を交えたボクサーたちが自らの人生を振り返りながら語る。第34回ミズノスポーツライター賞最優秀賞に輝いたスポーツノンフィクション『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』から2022年6月27日に開催された井上尚弥vs.ノニト・ドネアの戦いを一部抜粋して公開します。
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【写真は共同】
(フィリピン)
第2戦 2022年 6月7日 埼玉・さいたまスーパーアリーナ 2ラウンド 1分24秒 TKO
第2戦の勝利でWBA・IBF・WBC世界バンタム級王座統一
井上の戦績 23戦全勝20KO
264秒、衝撃のKO決着
植田は前回同様、テレビ局の要望や試合進行を逐一伝え、リングに先導することになっていた。だが、ドネアの対応は初戦と違った。
「ウォーミングアップをしているときに『テレビカメラを控え室に入れていい?』と聞くと、いつもなら『いいよ』と言うんです。でも、あの試合は1回くらいしかカメラを入れなかった。あとは『駄目だ』と言っていたんで」
試合直前に問題が露呈した。
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