高校サッカー選手権で見えた3つの傾向 戦国時代が終わり、幕を開けた新時代
東福岡の優勝で幕を閉じた第94回全国高校サッカー選手権。今大会は3つの傾向が見られた 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
U−18プレミアリーグ創設の影響
この約10年はある意味で高校サッカーの地域差や戦力格差が解消された「戦国時代」が続いていたのだが、11年度から東西10チームずつに分けたU−18プレミアリーグが創設されたことを分岐点として、東福岡を筆頭にプレミアの常連チームが高校サッカーの中で頭一つ抜け出す「横綱化」の現象が起きている。
優勝した東福岡は15年度のプレミアWESTで2位になっており、4強の青森山田もEAST2位の成績を残した。こうした事実からも分かる通り、プレミアリーグで日常的にJリーグのユースチームとハイレベルな公式戦を戦い、その中で毎年残留、もしくは上位争いができている強豪校は、選手権のようなトーナメント方式の80分(準決勝からは90分)ゲームであっても浮足立つことなく、普段通りのハイレベルなサッカーできちんと勝ち上がる力強さを見せ始めている。東福岡の森重潤也監督も「プレミアでハイレベルな戦いをしている。簡単に勝てるリーグではないし、その中で本当に鍛えられている」と話す。
また、國學院久我山の清水監督が準決勝後に「われわれの決勝進出よりも、星稜さんの4年連続ベスト4の方がすごい。本当にこれは強烈で、こんなことは絶対にできない」と語った通り、この記録はまさに偉業だ。裏を返せば、昨年度のファイナリストの星稜、前橋育英のように、毎年プリンスリーグで優勝とプレミアリーグ参入戦を狙えるような強豪校も“横綱”を狙える“大関”の番付にいると言える。
良いGKのいるチームが勝ち上がる
東福岡の脇野を筆頭に、ベスト4進出校にはハイレベルなGKがそろっていた 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
特に、年代別代表に入る脇野、廣末は大会中に高い評価を受けた足元の技術、フィード能力以上に、「失点しない」ためのポジショニング、キャッチングという基礎レベルの高さが際立っていた。
GKというポジションは専門性が高く、通常のサッカー指導者ではきめ細かな指導が難しい。今や全国大会に出場する出場校は当たり前のように「トレーナー」がベンチ入りしているように、強豪校ともなれば専門指導のできる「GKコーチ」もいる時代に突入している。
こうした傾向を好機として、GKの育成が高校サッカーにおいて日常的なテーマとなり、全国レベルの強豪校のみならず、全国を目指す標準レベルの高校においても専門的なGK指導が受けられる環境が整うことを望みたい。