大社が実践する“中西メソッド”とは? 3年間の集大成として選手権に挑む
攻撃力を誇る島根県代表の大社
4年ぶりに選手権に出場する島根県代表の大社。中西哲生氏(左から2番目)による独自の技術メソッドを実践し、力をつけてきた 【小澤一郎】
中西メソッドとは、名古屋グランパス、川崎フロンターレなどで活躍した元プロサッカー選手で、現在はスポーツジャーナリストとして活躍する中西哲生氏が構築する独自の技術メソッドのこと。その理論を求めて、男子の日本代表選手やなでしこジャパンのFW大儀見優季(フランクフルト/ドイツ)ら、少なくない数の男女プロサッカー選手が定期的に中西氏からパーソナル指導を受けている。
中西氏が島根県出雲市の観光大使に就任したことをきっかけに、3年前から年4、5回の頻度で大社の指導を行うようになり、中西メソッドを選手たちに3年間みっちり教え込んだ。そのメソッドを習得した3年生が、いきなり全国の切符を手にした。中西氏は今では、選手指導が目的で島根県まで出向き、1回の出張で金曜日から日曜日にかけて計4回のトレーニング指導を行うという。だが、あくまで技術指導の“臨時コーチ”であり、「一番重要なことは監督やコーチが僕の技術指導をチーム戦術に落とし込んでくれること」と説明する。
大会直前になでしこ大儀見らとトレーニング
大社の選手たちは28日に関東入りし、大儀見(右)らと神奈川県内でトレーニングを行った 【小澤一郎】
「サッカーで一番重要な『止める』『蹴る』の部分がすごく改善しました。正直、最初に来てもらったころは『本当だろうか?』と半信半疑なところもあったのですが、中西さんの指導によって、選手がすごく良くなったので驚かされました。本当に理に適った理論で、指導に来て頂けるのは年に何回かなのですが、われわれが中西さんの理論を落とし込みながら指導にあたっています」
中西氏との出会いについては、「よく覚えていないんですよね」と佐々井監督は苦笑いする。だが、3年前に「日本がワールドカップ(W杯)で優勝することを考えた時、そのスケール感と出雲にある県立高校の大社が全国優勝するという距離感がすごく似ている。大社が全国で優勝できるのであれば、日本代表もW杯優勝できると信じて自分の持っている全てを大社に提供したい」という熱い思いを中西氏に語られたことで、メソッドの全面導入を決めたのだという。
31日に優勝候補の一角である青森山田(青森)との初戦を控える大社は28日に関東入りし、神奈川県内でトレーニングを行った。初戦までの3日間の直前トレーニングに駆け付け、直接指導するという中西氏は28日、日頃から指導を行う大儀見、昨シーズンジェフユナイテッド千葉でプレーしていた能登正人の2選手を大社の練習に連れてきた。
その意図について中西氏はこう説明する。
「大社の選手たちには、日頃から僕が指導しているプロ選手のトレーニング映像や文献をLINEで送っています。実際、この2人は自分の理論をすごく理解してくれている選手たちで、そうした選手が目の前に来て一緒に練習することはすごく重要だと思っています。普段と違う環境に来て、少し浮ついた気分になっているかもしれませんが、彼らが来てくれたことでピリッと締まりました。何より、このタイミングでプロ選手とプレーしておけば初戦での驚きも少ないと思います」