“ミスター社会人”西郷泰之の“結” いつか恩返しを―波乱万丈の現役25年に幕
社会人野球25年の現役生活にピリオドを打った“ミスター社会人”西郷泰之 【スポーツナビ】
端正な表情で、穏やかに笑う。西郷泰之。都市対抗野球で歴代1位タイの14本塁打を記録し、他チームへの補強も含め、都市対抗での優勝が6回。43歳の今季まで25年間プレーを続けた“ミスター社会人”である。1996年のアトランタ五輪で銀メダルを獲得するなど、国際経験もきらびやかだ。11月に、現役引退の記者会見を行った。
最多タイの都市対抗14本塁打
左打席から広角に打ち分ける巧打と甘いボールはスタンドへ運ぶパワーを兼ね備えた西郷は都市対抗最多タイの14本塁打を放った 【写真は共同】
ただ、
「僕は、厳密にはホームラン打者じゃない」
と西郷はいう。
「ホームラン打者というのは、コンッと当たった瞬間にホームランの角度で上がる。僕の場合は、いいポイントでとらえ、うまく運べた打球がホームランになる。運ぶ、というのは、ボールをバットに2回当てるような感覚です。打ったあとのゴルファーが、ボールの先のターフを取る、あんなイメージ」
セレクションで「人生一番の打撃」
すぐに打者に専念すると、「2、3年でクビになる」という危機感から、がむしゃらに練習した。結果が出始めたのは4年目の94年で、同じ神奈川の強豪・東芝に補強された西郷は、都市対抗で代打タイムリーなどを記録。チームに戻ったあとは、主軸を任された。
「あれは大きな自信でしたね。自分のチームでは、試合に出たり出なかったりなのに、強豪が補強してくれたんですから」
アトランタ五輪で銀獲得に貢献も…
日本代表としても活躍した西郷(一番右の背番号8)。アトランタ五輪では後にプロでも活躍する松中、谷、井口、福留、今岡らと銀メダルに貢献した 【写真は共同】
「アトランタのあと1、2年は、野球に嫌気がさしていたんですね。どれだけ打ったらプロが認めてくれるんだ、あるいはなぜ野球をやっているんだ、と疑問を感じ、当時の監督に”辞めさせて下さい”ともらしたこともありました」