服部勇馬のキャプテンシーが光る東洋大 チーム力で箱根駅伝の王座奪還を
新たに加わった“諦めない粘り”
11月の全日本大学駅伝で初優勝を飾った東洋大の「チーム力」はいかにして高まったのか 【写真は共同】
1区のエース・服部勇馬主将(4年)は先頭争いから一度は離されかけたものの、ラスト勝負で逆転。青山学院大、早稲田大と同タイムながら区間賞を獲得した。すると、2区で後続を引き離した弟の弾馬(3年)も、残り200メートルからもう一度切り換えて、目の覚めるようなスパート。3区で区間賞を獲得し、大会のMVPに選出された口町亮(3年)や、青山学院大との一騎打ちとなった4区以降の選手たちも同様だ。特に6区の野村峻哉(2年)は、日本インカレ10000メートル7位の実力者・渡辺心(青山学院大4年)に一度差を広げられたが、ラストスパートで一気に抜き去り、中継所では10秒差をつけた。チーム全体として、昨季までの1秒をけずりだすスピリットに、諦めない粘りが加わった印象だ。
全日本の勝因について選手たちは、「絶対に勝つのだという気持ちが、これまで以上に強かった」と口をそろえる。普段は寡黙な選手でも、大会前には「勝ちたい」とはっきりと言葉に出していた。駅伝を走ったメンバーに限ったことではない。「全員が1秒をけずりだす努力をしてきた」と服部勇が話すように、部員全員が勝利への意欲を共有し、自分にできる努力と行動で盛り立てた。その背景にあるのは、最上級生たちのチーム作りだ。
「ただ走るだけでは付いてきてくれない」
エースで主将の服部勇馬が下級生や故障者とも寄り添うことで、周りも変わっていった 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】
学生長距離界トップクラスの力を持つ主将が、自分の競技だけに集中するのではなく、下級生や故障者とも寄り添い、共に苦難を乗り越えていけば、彼らの士気も高まる。そしてそんな主将の姿を見れば、他の4年生も変わる。副将の上村和生(4年)は、「『自分もやらなければ』と思うようになった」と話す。服部勇はこの1年間で一番うれしかった出来事に、「周囲の4年生が支えてくれたこと」を挙げた。4年生が1つになることで、チーム全体にも一体感が生まれた。