富士山女子駅伝から東京五輪へ――原石たちがつなぐたすきのドラマ[1]

中尾義理
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提供:フジテレビジョン

 12月30日に号砲を待つ2015富士山女子駅伝(全日本大学女子選抜駅伝)。10月の全日本大学女子駅伝の上位12校と選考された6校、選抜3チームが出場する。女王・立命館大が君臨し続けるか。それとも追いかける大東文化大、松山大、日体大などが新たな歴史をつくるか。日本の最高峰が見守る7区間43.4キロメートルをつなぐのは2020年東京五輪を24〜27歳で迎える世代が中心。未来のヒロインを夢見るホープたちにどんなドラマが待っているのだろう。

優勝候補は立命館

10月の全日本大学女子駅伝で力走する大森菜月(立命館大)ら 【写真は共同】

 今、大学女子駅伝は立命館大が黄金時代を築いている。15年の全日本大学女子駅伝では「大会新記録&区間賞独占&5年連続10度目の優勝」を達成した。富士山女子駅伝でも2連覇中。たすきの勢いが止まる気配はない。

 なぜこうも強いのか。「何でしょうね。毎年必死なんですよ」と十倉みゆきヘッドコーチ。ただ今年の全日本大学女子駅伝に限っては、「うちに勝とうという他大学の雰囲気を特に感じました」と言い、ユニバーシアード女子ハーフマラソン準優勝の菅野七虹(3年)をケガからの回復途上のために欠いたことで、「みんなが危機感を持ち、一丸になってくれました」と完全優勝の背景を明かす。

 15年度の女子長距離部員は22人。高校駅伝の強豪として知られる系列校・立命館宇治高の主力をはじめ、「大学女子駅伝で日本一になれるチーム」に憧れる有望選手が扉をたたく。

 選手たちは競技力と同様に目的意識も高い。十倉ヘッドコーチは「大学4年間だけ頑張るというよりも、『実業団で通用する力を大学でつけて、卒業したら実業団でさらに頑張り、日本代表として世界のレースに出て行きたい』という夢を持って取り組んでいる学生が増えてきました」と話す。日本一になれるチームの秘けつはこのあたりにありそうだ。

 しかし実際の勧誘現場は立命館大とて楽ではない。高校トップクラスの選手の中には、20年まで5年を切り、東京五輪を目指すなら大学に行っていたのでは間に合わない、実業団で鍛えて力を伸ばしたいと、大学からの勧誘を断るケースもあるという。

 立命館大で駅伝を走った歴代選手では、00年卒の加納由理さんが09年世界陸上女子マラソンで7位入賞しているが、五輪選手はまだ出ていない。実業団に進んだ卒業生はもちろん、5000メートルで現役女子大生トップの15分28秒32を持つ大森菜月(3年)や菅野ら在学生に、大学女子駅伝日本一のチームの夢が託されている。

女王・立命館を追うのは?

 立命館大を追って実力をつけてきたのは、大東文化大だ。10年に女子長距離ブロックを立ち上げた。創部3年目以降、全日本大学女子駅伝は6位‐2位‐2位‐2位。短期間で強豪校の仲間入りを果たし、関東、東北はもちろん、九州、四国からも全国高校駅伝などを経験した選手が進学してくる。「日本一を倒して、日本一になろう」。その思いで集まり、切磋琢磨し、記録を伸ばし、立命館大に挑戦し続けている。

 前回大会2位の大阪学院大は10年に熊本で高校駅伝の強豪校を率いた志水貢一監督が就任。新体制で駅伝強化に乗り出した。高校時代の土台に“貯金”を上積みし、3年生、4年生で記録を伸ばす、いわば「4年間育成」の視点で指導し、実業団に進む選手を輩出している。現役では今年のインカレ女子5000メートルで立命館大の大森に競り勝って優勝した新井沙紀枝(3年)がいる。同大1995年卒の高橋尚子さん(2000年シドニー五輪女子マラソン優勝)に続くヒロイン誕生が待たれる。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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