然るべき結果に落ち着き始めたリーガ 現時点の順位表が示す今季の傾向

突出した個の力で勝利を重ねるバルサ

バルサはネイマールをはじめとする突出した個の力で質の高い攻撃を実現している 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 勝ち点では並んでいるものの、ここまでバルセロナがたどってきた軌跡はレアル・マドリーのそれより激しい起伏を伴うものだ。多くの試合をその攻撃力をもってねじ伏せてきたが、それはチームとして質の高い攻撃を実現しているというよりは、アタッカーたちの突出したタレントによるところが大きい。その理由は2つある。1つは選手層があまりにも薄いこと。もう1つはエースのリオネル・メッシをけがで欠いていることだ。

 現在のバルセロナは、以前なら容易に勝利を手にしてきたレベルの相手に対しても苦戦を強いられるようになっている。そしてそれらの試合のほとんどはネイマールやルイス・スアレス、時にチャンピオンズリーグのBATEボリソフ戦(2−0)のように、イバン・ラキティッチの素晴らしいプレーによって解決してきた(BATEボリソフ戦でラキティッチは2ゴールを挙げた)。

 だがチーム力という点から言えば、現在のバルセロナは以前ほど他のライバルを大きく上回るレベルにはない。しかもジェラール・ピケやダニエウ・アウベスらがベストの状態になく、代えの利かない選手であるハビエル・マスチェラーノが2試合の出場停止を強いられる(編注:9節エイバル戦で退場になった際に暴言を発したことによる処分)など、厳しい状況が続いている。

 バルセロナの希望はメッシの復帰がクラシコに間に合う見通しであること、そして万が一彼が間に合わなくとも、少なくとも1月には補強が解禁されることだ。アレイクス・ビダルとアルダ・トゥランを登録し、スアレスの代役となるセンターFWやうわさに上っているマヌエル・アグード“ノリート”の獲得によって戦力を上積みすれば、後半戦に向けてチーム力を大幅に底上げすることができるはずだ。

機能性を取り戻したアトレティコ

ジャクソン・マルティネス(11番)らがポテンシャルを発揮しはじめており、攻守共に連動性に磨きがかかってきたアトレティコ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 この2チームを追うアトレティコも首位争いに含めないわけにはいかない。ビセンテ・カルデロン(アトレティコのホームスタジアム)でバレンシアに勝利(2−1)した前節、アトレティコはディエゴ・シメオネが監督に就任して以降、最も重要な機能性を取り戻した印象を与えた。

 1点差に迫られたゲーム終盤こそ苦しんだものの、アトレティコはポジショニング、高い位置からのプレス、コンビネーションプレーといった要素でバレンシアを圧倒し続けた。

 守護神ヤン・オブラクのプレーは極めて安定し、ディフェンスラインと3人のボランチは不動。2トップのローテーションも最低限に抑えている。過去にシメオネがチーム作りの過程で示してきたセオリー通り、現在のアトレティコも固定したメンバーで戦い続ける中で、攻守共に連動性に磨きをかけている。

 この試合はまた、今季の新加入選手たちがようやく期待に応えはじめた一戦でもあった。いち早くその才能を知らしめたアンヘル・コレアやルシアノ・ビエットに続き、この試合で重要なゴールを決めたジャクソン・マルティネスとヤニック・カラスコも、遅ればせながらそのポテンシャルを発揮しはじめている。

 これからシーズンの終了まで、リーガの上位3枠が頻繁に入れ替わることはまずないはずだ。絶好調のセルタや豊富な戦力を擁するセビージャですら上位3チームの争いに食い入ることは難しいだけに、現時点の順位表が今季の傾向を表していると言ってよいだろう。

 今季のリーガ・エスパニョーラもまた、然るべき結果に落ち着くことになる。そんな現実は、シーズンの4分の1を消化するまでもなく証明されてしまった。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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