錦織圭はジャパンオープンでなぜ強いのか? 『ベイビーステップ』のエーちゃんがデ杯を直撃
【(C)『ベイビーステップ』勝木光/講談社】
リターンのポジションで相手の裏をかく巧妙さ
エーちゃんとともに錦織戦を分析する青井コーチ 【(C)『ベイビーステップ』勝木光/講談社】
青井 やっぱ“聖地”有明にはたまに来ないとな。錦織は初戦(ボルナ・コリッチ戦)のファーストセットこそ苦しんだけど、日本のファンの期待を一身に背負う緊張状態の中で、相手はテニス界大注目の超新星だろ。しかも初対戦だったからな。第2セット以降、きっちり自分のテニスで勝ち切ったあたりは、さすが年間を通じてトップ10を維持する選手だよ。
エーちゃん 2回戦(サム・クエリー戦)も、ファーストセットはタイブレークまでもつれましたけど勝ちました。
青井 あのファーストセットはビッグサーバーのクエリー相手にお互いブレークを許さず迎えたタイブレークだからな。苦しんだとはいうより順当に近いよ。むしろあそこでエンジンがかかったように見えたけどな。
エーちゃん 僕もそう思いました。ファーストセット6−6で迎えたタイブレークの2ポイント目で。錦織選手が最初のサーブをミニブレークされた次のポイントです。
青井 おお……相変わらず視点が細いね。それ、どんなポイントだったっけ?
エーちゃん 錦織選手がかなりバック側に来たチャンスボールを、思いっきりフォアに回り込んでエアケイで決めたんです。あそこは普通バックで打ちます。精神的にかなり攻める気になってないと、あそこまでフォアには回り込まないと思うんです。
青井 確かに。じゃあ丸尾はあそこがクエリー戦のターニングポイントだったってことか?
エーちゃん いや、あそこもそうですけど「これで決まったか……」と思ったのは第2セット1−1の30−40。錦織選手がこのセカンドセット最初のブレークを決めたポイント(下図)です。
リターン位置の変更で相手の裏をかいた錦織の一球 【(C)『ベイビーステップ』勝木光/講談社】
エーちゃん このポイントは最初、クエリー選手のファーストサーブがネットにかすって、レット(やり直し)になったんです。そしたら錦織選手は、次も同じファーストサーブが来るはずなのに、リターン位置を思いっきり後ろに下げたので驚きました。そしてクエリー選手のサーブが入ると、一気に前に出て、通常より前の位置でスピンを効かせた深いリターン。クエリー選手はきっと、驚いて「ダマされた……後ろに下がってしっかり守ると見せかけて、前に来た。ここはブレークポイントだし思い切って攻めてくるつもりなんだ……」と一瞬混乱したに違いありません。そしてクエリー選手はその深いリターンで後ろへ下がらされ、心身共に守備を意識させられて打ったショット(上図1)に対して、錦織選手の完璧なドロップショット(上図2)が決まりました。
青井 タイブレークまで競ったファーストセットの直後。つまりセカンドセットの序盤でどっちが自分のテニスをしているかをハッキリ示した1ポイントだったよな。
エーちゃん すごいですよね……世界のトップクラスで日本中の期待を背負って……なんであんな自分らしく強いテニスができるんでしょう。
青井 特にジャパンオープンは強いんだよな、錦織は……。
エーちゃん ……。