錦織圭はジャパンオープンでなぜ強いのか? 『ベイビーステップ』のエーちゃんがデ杯を直撃
日本を背負う経験が自信につながる
日本テニス協会ナショナルチーム・男子ヘッドコーチ・デビスカップ代表コーチとして錦織らを指導する増田健太郎 【(C)『ベイビーステップ』勝木光/講談社】
エーちゃん 増田さん……?
青井 日本テニスナショナルチーム男子の増田健太郎ヘッドコーチだよ。
青井 俺も元プロだからね、一応。
エーちゃん てことは……9月のデ杯(※)にも錦織選手と同行されてた方ってことですか?
増田 もちろんです。
青井 それだけじゃなくて、今回ジャパンオープンに出ている日本の若手選手をはじめ、多くのナショナルチームの選手が、この増田さんがサポートを受けてる。
エーちゃん すごい……!
増田 いえいえ、丸尾くんこそ大活躍でしょう。注目していますよ。
エーちゃん と……とんでもないです!
青井 ところで増田さん。今、丸尾と話してたんですけど、なんで錦織選手はジャパンオープンでこんなに強いんでしょうか。
増田 時期的にいつも、直前にデ杯を経験してるのは大きいかもしれませんね。
エーちゃん え? どうしてデ杯を経験すると、ジャパンオープンで強くなれるんですか?
増田 デ杯は日本を背負って戦うことになるので、個人戦とは比較にならない極限の緊張状態に立たされますから。日本を意識して戦って、それを乗り越える経験は間違いなく大きな自信につながるんだと思いますよ。とくに故郷で迎えるジャパンオープンに対してはね。
エーちゃん なるほど……では9月のデ杯での錦織選手は、その極限の緊張状態の中で、やはりいつもと違う戦いだったんですか?
増田 それは明らかに違いますよ。テニスは自分よりランキングの低い相手でも、わりと負けることがあるスポーツです。個人戦なら負けても次に自分で取り戻せばいいですが、団体戦はチーム、スタッフ、関係者、日本中のファンを巻き込みますから絶対に取りこぼせない試合なんです。だからどうしたって出場選手はナーバスになります。しかも今回はワールドグループに残留できるか否かの大事な入れ替え戦でした。圭はいつもならニューボールチェンジごとに新しいラケットに持ち替えますが、今回は格下の相手に対してラケット(ガット)のわずかなテンションを気にして2、3ゲームに一度ラケットを替えてましたからね。おそらく緊張状態で通常のスイングができず、微調整が必要だったんだと思います。
ワールドグループ残留を決め、緊張が解けた錦織は、思わずガッツポーズを見せた 【写真:ロイター/アフロ】
増田 そういうことです。
青井 なるほど。錦織選手は2013年も全米オープンで無念の1回戦負けをしましたが、デ杯を転機に翌2014年5月にトップ10入りを果たしましたもんね。
エーちゃん 2014年もデ杯カナダ戦の勝利後、ジャパンオープンに優勝してATPワールドツアーファイナルにアジア人として初出場して準決勝に進出しました。
増田 とはいえ今大会の初戦のコリッチ戦は厳しかったみたいですけどね。でもあそこを乗り越えられたのは大きかったみたいですよ。クエリー戦は思い通りにできたみたいで、その後で内山選手と練習する圭を見ましたが、スイング、フットワークなど動きはかなりよくなってましたから。今回もチリッチ、スタン・ワウリンカと強敵ぞろいですけど、かなりいい試合が期待できるんじゃないですかね。
エーちゃん 本当ですか! 楽しみにしています。
※編注 デ杯とは、デビスカップ(男子テニスの国別対抗戦)のこと。日本は9月にワールドグループ・プレーオフでコロンビアに勝利し残留を決めた。