追いつめられたオランダの重大な欠点 ユーロ出場には「奇跡が必要」

中田徹

高くついたレッドカード

アイスランド戦ではマルティンス・インディが一発退場。数的不利の状況を強いられ、ホームで痛恨の敗戦を喫した 【写真:ロイター/アフロ】

 オランダは、ユーロ(欧州選手権)2016予選A組の9月シリーズで、アイスランド(0−1)とトルコ(0−3)に連敗を喫した。この結果、オランダはトルコに抜かれて4位に落ちた。残るは2試合。アイスランドとチェコの勝ち抜きが決まったA組において、オランダが本大会出場を決めるためには3位になって、プレーオフに進むことが必要だ。オランダは残り2試合でしっかり勝った上で、トルコの勝ち点取りこぼしを待つしかない。オランダメディアは「(オランダが3位に滑りこむには)奇跡が必要」と弱気に報道している。

 9月3日、オランダはアイスランドをアムステルダム・アレーナに迎えて戦った。序盤、オランダはビッグチャンスこそ生み出せなかったが、狙い通りに右ウイングのアリエン・ロッベンを相手サイドバック(SB)と1対1にする状況を作っていた。しかし、31分にロッベンが負傷してベンチに下がると、33分にはセンターバック(CB)のブルーノ・マルティンス・インディがアイスランドのストライカー、コルベイン・シグトルソンの挑発に乗り相手の首にチョップを入れる報復行為で退場してしまう。試合後、ダニー・ブリント監督が「インディの退場、あれが試合のブレークポイントとなった」と振り返るほど、マルティンス・インディのレッドカードは高くついた。

 ブリント監督は40分、センターFWのクラース・ヤン・フンテラールを下げ、ジェフェリー・ブルマを入れてCBを強化した。10人で戦わざるを得なくなったことでホームのアイスランド戦を引き分け狙いに切り替えたが、この消極策に場内は大ブーイング。一方、ラルス・ラガーベックと共同監督を務めるヘイミル・ハルグリムソンは、「フンテラールが下がってくれて、正直ホッとしたよ」と振り返っていた。

 ロッベンの負傷、マルティンス・インディの退場に続き50分、オランダは再び悲劇に襲われる。アイスランドのMFビルキル・ビャルナソンの注文にまんまと引っかかったグレゴリー・ファン・デル・ビールがPKを献上するファウルを犯してしまったのだ。ギルフィ・シグトルソンがこの試合の決勝点となるPKを決めた(ゴールは51分)。

 1人少ないオランダは明確なチャンスを作りきれず、0−1の完封負けを喫した。幸い、4位トルコがラトビア相手にアディショナルタイムに同点ゴールを決められる失態を演じ、1−1と引き分けたため、この時点でオランダはまだ3位。アウェーでのトルコ戦は引き分けで十分という状況になった。

ビハインドを負っている時間は336分

トルコ戦では0−3と完敗。ビハインドを負っている時間が長く、守備の不安定さが際立つ 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし7日、コンヤで行われたアウェーマッチでオランダは0−3という歴史に残る惨敗を喫することになる。8分、オランダ育ちでオランダ年代別代表にも選ばれていたオウズハン・エジャクップが、トルコの先制ゴールを決めると、26分にはアルダ・トゥランが追加点。86分にはエースストライカーのブラク・ユルマズがとどめの3点目を決めた。トルコが効率よくゴールを決めたのに比べ、オランダは拙攻が続いた。2点を追うオランダは50分、メンフィス・デパイのクロスに対して・ジョルジニオ・ワイナルドゥムがゴール5メートル前でフリーになるビッグチャンスを迎えたが、ヘッドは空振りし肩に当たって遠くへ外れていった。
 
 アイスランドとトルコに与えた失点は、いくつものデジャブがあった。ビャルナソンはレイキャビクでのホームマッチでも、ステファン・デ・フライのファウルを誘ってPKを得ている。トルコ戦では8分と26分に失点したが、立ち上がりにゴールを許してしまうのは、今予選でのオランダの特徴である。アルへメーン・ダッハブラット紙によれば、オランダはこの予選で336分もビハインドを負って戦っている。これはジブラルタル(509分)、サン・マリノ(443分)、アンドラ(421分)、マルタ(381分)に続く記録である。どれだけオランダが簡単に相手にリードを許しているか分かるだろう。

 この2試合の4失点はすべてオランダDF及びGKの個人のミスだった。この傾向は1年前、イタリアとの親善試合で0−2と敗れたときから変わっていない。オランダのDF陣は守備に関して学習能力が低いのかと疑いたくなる。トルコ戦の選手採点を付けたデ・テレフラーフ紙は、ファン・デル・ビールにチーム最低の4を与え、「まるで学生がサッカーをしているようだった」と酷評したが、今予選のオランダの守備は本当にナイーブだった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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