追いつめられたオランダの重大な欠点 ユーロ出場には「奇跡が必要」
クラブレベルでも同じ現象が見られる
ナイーブなのは代表チームだけではない。クラブレベルでも同じ現象が見られ、勝負弱さを露呈している 【写真:ロイター/アフロ】
ヒディンク本人は「ホーラント・スクール2.0を実現する」と息巻いたが、イタリア戦で惨敗したことからファン・ハールの成功に呪われてしまい、続くチェコ戦で5バックを採用する迷走を見せた。そして1−1で迎えたアディショナルタイムに、右SBダリル・ヤンマートの致命的なバックパスミスから決勝点を許してから、オランダは負の連鎖に陥り現在へ至っている。
こうした事例は、クラブレベルでも起こっている。この夏、アヤックスはラピド・ウィーンに敗れてチャンピオンズリーグ出場権を逃したが、第1レグのアウェーマッチ前半はなかなかの好内容で2点を先制していた。後半1点を返されたが、相手選手が1人退場になるという良い流れに恵まれた。それでもアヤックスはCBヨエル・フェルトマンの凡ミスから失点し、2−2の引き分けに持ち込まれてしまった。第2レグのホームゲームは同点弾を決めた直後に気が緩み、失点して敗退(2戦合計スコア4−5)。続く、ヨーロッパリーグのプレーオフでも、相手にPKを与えたり、敵陣で不必要なファウルをして退場になったりするミスを連発したが、辛うじて1勝1分けで勝ち上がった。
アヤックスは22歳前後の選手で構成される非常に若いチームだが、「若い」では許されないナイーブな試合を国際試合で繰り返し、せっかくの成長機会を逸している。それはすなわちオランダリーグ、オランダ代表の欠点にもつながっている。もちろん、こうした事例はアヤックスに限らない。近年のPSV、フェイエノールト、フィテッセ、フローニンゲンは勝てる試合を引き分けたり、負けてしまったりしている。代表チームの欠点は、クラブチームにさかのぼることができるのだ。
次世代のFWが育っていない寂しさ
劣勢を強いられたトルコ戦で投入されたのはルーク・デ・ヨング(右)。ファン・ペルシー(左)も32歳となり、次代のFWが育っていない寂しさを感じさせる 【写真:ロイター/アフロ】
しかし、当時のオランダには有り余るほどのFWがそろっており、前述のポルトガル対オランダのような名勝負も生まれていた。それに比べると、今回のオランダはトルコ戦の“ピンチヒッター(これはオランダのサッカー用語だ)”がPSVのルーク・デ・ヨングで、そのスケールは小さかった。
ほんの少し淡い期待を持ちたいのが、オランダU−21の選手たちだ。A代表がアイスランドに敗れた翌日、キプロスと戦った彼らは4−0で大勝した。フェイエノールトで伸び悩んでいたジャン=パウル・ボエチウス(バーゼル)、フランク・デ・ブール監督とアヤックスでぶつかりラツィオへ移ったリカルド・キシュナ、昨季は2部リーグでプレーしていたヴィンセント・ヤンセン(AZ)の3トップは魅力的だった。
現在、オランダリーグで手を付けられないほどの活躍をみせるウサーマ・タナーネ(ヘラクレス)も途中出場で実力の片りんをみせた。アヤックスの右ウインガー、アンワル・エル・ガジは負傷のため今回のキプロス戦を辞退したが、今季に入ってから急速に決定力を向上させている。年代別代表チームの試合に一喜一憂したくはないが、それほど今のオランダは追い詰められている。この世代から1人でも2人でも、本当の意味でのブレークを果たしてほしい。それが、個人的な切なる願いである。