3年ぶりに日本へ帰ってきたクラブW杯 個性豊かな参加クラブと高まる注目度

河治良幸

全体的に隙がないバルセロナ

4大会ぶりの参戦となるバルセロナは、日本開催だった11年大会の決勝でブラジルの名門サントスを相手に4−0と圧勝し優勝を果たしている 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 FIFAクラブワールドカップ(W杯)が3年ぶりに日本で行われる。開催国が2大会セットでの持ち回りとなるフォーマットで、過去2大会はモロッコで開催され、今年と来年が日本、その後の2大会はアラブ首長国連邦(UAE)が会場になることが決まっている。

 大会を重ねるごとに国際的な重要性が高まってきているが、これまで欧州と南米どちらかの大陸のクラブが優勝しており、しかも過去8大会中7回を欧州のクラブが制している。現在の勢力図を表している結果と言えるだろう。ただし、2010年のUAE大会ではアフリカ王者のマゼンベ(コンゴ)が、13年のモロッコ大会では開催国のラジャ・カサブランカが南米王者を破って決勝に進んでおり、また前回はオセアニア王者のオークランド・シティが3位になるなど、参加するクラブすべてに躍進のチャンスがあることを示している。

 今大会も優勝の有力候補になる欧州代表はバルセロナだ。世界最高の選手とも評価されるアルゼンチン代表のFWリオネル・メッシを擁するバルセロナは09年と11年に優勝しており、日本開催だった11年大会では決勝でブラジルの名門サントスを相手に4−0と圧勝した。当時は現在バイエルン・ミュンヘンで指揮を執るジョゼップ・グアルディオラ監督が率い、シャビやアンドレス・イニエスタらカンテラ(クラブの下部組織)出身の選手を中心としたパスワークから、メッシが決めるという王道の得点パターンで世界に名声をとどろかせた。

 ルイス・エンリケ監督に引き継がれてからも基本的なスタイルは変わっていないものの、メッシに加えて11年にサントスのメンバーとして来日していたブラジル代表のネイマール、イングランドのプレミアリーグで得点王に輝いた実績を持つルイス・スアレスを加えて“MSN”と呼ばれる強力な3トップを形成。昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグでは、準決勝で前回王者のレアル・マドリーを破ってきたイタリアのユベントスを一蹴(3−1)して欧州王者に輝いた。

 4−3−3の基本的なフォーメーションは変わらないが、グアルディオラ時代はメッシが前線の中央で“ゼロ・トップ”とも言われるポジションを取りながら、ゴールに最も近いところで味方の好パスを引き出していたのが、現在はスアレスを中央に配置して、左右からネイマールとメッシがゴール前に入ってくる構成に変わっている。彼らを主に中盤で支えるのはスペイン代表のイニエスタとセルヒオ・ブスケッツ、クロアチア代表のイバン・ラキティッチの3人で、彼らが正確に素早くパスをつなぐことで、良い形で前の3人がボールを持つことができる。

 強力な攻撃陣に目を奪われがちだが、リーベル・プレート出身のアルゼンチン代表DFハビエル・マスチェラーノを中心とした最終ラインは中盤に合わせて高いポジションを取り、組み立てとカバーリングの両面でチームを支える。右サイドバック(SB)のダニエウ・アウベスと左SBのジョルディ・アルバは鋭い攻め上がりを得意とするが、守備の切り替えも素早く、攻守に厚みをもたらし、3トップを中心とした攻撃にサイドからアクセントを加えている。11年のチームほど中盤のボールポゼッションにこだわりは持たないが、全体のバランスが良く隙のないチームとなっている。

サビオラが復帰したリーベル・プレート

スルガ銀行チャレンジカップでJリーグ王者のガンバ大阪と対戦したリーベル・プレートは、局面のクオリティーと決定力の高さを発揮して3−0の快勝を収めた 【写真:アフロスポーツ】

 対抗馬となる南米から今回のクラブW杯に参戦するのは、アルゼンチンのリーベル・プレートだ。南米王者を決めるコパ・リベルタドーレスの決勝でメキシコのティグレス(招待枠で参加)を撃破(2戦合計3−0)し、3度目の優勝を果たしたリーベル・プレートは現役時代に同クラブで伝説的な活躍を見せたマルセロ・ガジャルド監督に率いられ、創造的な攻撃と堅固な守備の両立を実現。基本フォーメーションは4−4−2だが、中盤は試合によってダイヤモンド、ボックス、フラットと変形させ、時に1トップの形も採用される。選手たちも柔軟に適応するのが1つの特徴となっている。

 攻撃陣ではコロンビア代表のテオフィロ・グティエレスとコパ・リベルタドーレスで大活躍したロドリゴ・モラが国外に移籍、元アルゼンチン代表のパブロ・アイマールが現役を引退したが、下部組織の出身で、バルセロナなど欧州のクラブで活躍したFWハビエル・サビオラがガジャルド監督の誘いを受け復帰。22歳の新鋭ルーカス・アラリオも加わっており、高い攻撃力は維持されている。中盤の底ではサビオラとともに今夏戻ってきた“ルチョ”ことルイス・ゴンサレスとクラネヴィッテルが攻守の舵取り役をつとめる。強さとうまさを兼ね備えたクラネヴィッテルはスペインのアトレティコ・マドリーに年明けの移籍が確定しているとも伝えられ、決勝でバルセロナとの対戦が実現すれば、大きな注目を集めるはずだ。

 今月にはコパ・スダメリカーナの王者(コパ・リベルタドーレスに準じる、もう1つの南米カップ戦)として来日し、11日にスルガ銀行チャレンジカップでJリーグ王者のガンバ大阪と対戦したが、結果は3−0とリーベル・プレートが快勝。G大阪が代表戦の影響などで複数の主力を欠いたとはいえ、局面のクオリティーと決定力の高さが発揮された。各国代表の主力クラスをそろえているわけではないが、厳しい南米の大会を勝ち抜いてきた経験と勝負強さはクラブW杯でも大いに発揮されるに違いない。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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