瀬戸大也を復調させたコーチの言葉 世界水泳で日本人初V2の快挙

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勝負強さを発揮し、果たした大偉業

今大会、不調に陥っていた瀬戸が復活! 日本人初の世界選手権2連覇の偉業を果たした 【Getty Images】

 やはり、この男は何かが違う。元来のポジティブさと、大舞台になるほど発揮する勝負強さが魅力の男は、ロシア・カザンで再び大偉業を成し遂げた。9日(現地時間、以下同)に行われた水泳の世界選手権・男子400メートル個人メドレーで、瀬戸大也(JSS毛呂山)が4分8秒50の自己ベストで日本人初の2連覇を達成。来年のリオデジャネイロ五輪代表に内定した。今大会で、日本勢が個人種目で獲得した金メダルは過去最多の計3個となった。

 得意とする最初のバタフライからトップへ抜け出す。続く背泳ぎではタイラー・クラリー(米国)に抜かれ2位になるものの、平泳ぎで再びトップに躍り出た。最後の自由形では、「とにかくきつかったけれど、抜け出たのが分かった。このチャンスを逃すわけにはいかないと思った」と持てる力を振り絞り、しっかりと逃げ切った。

 5日の200メートルバタフライで6位に終わり、同日行われた200メートル個人メドレーでも準決勝敗退と突如不調に陥り、瀬戸の連覇は厳しいと思われていた。しかし、ここで瀬戸は、自身の真骨頂でもあるポジティブさを見せ、わずか3日で見事な立ち直りを見せた。

時には妥協をすることも負けではない

 この3日間、やってきた練習は特別なものはない。4泳法をあらためてすべてチェックし、細かな修正を加えた。呼吸のタイミングであったり、蹴り足の位置を少し上げるように意識した。それでも、瀬戸の調子が完全に戻ったわけではなかった。これまでに経験のない、大会期間中に崩れた自分に対し、恐怖や不安を感じていたという。瀬戸を指導する梅原孝之コーチは、復活の糸口が見えない彼に、初めてこんな言葉をかけたという。

「時には妥協をすることも負けではない。メダルにこだわらずに、今持っている力を出せばいいんじゃないか」

恐怖や不安を口にする瀬戸に対して、梅原コーチは自分の泳ぎだけに集中するよう、声を掛けた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 これまで2人は、シーズンが始まる前に目標やタイムを設定し、そこからブレない様に心掛けて来た。しかし梅原コーチは、今シーズンの目標として掲げてきた世界選手権の優勝を目指すのではなく、とにかく自分のベストパフォーマンスをすることだけを意識させた。隣の選手に競り負けず、目の前のレースに集中することだけを求め、そして瀬戸は、それに見事に応えてみせた。

「とにかく、終わったことは仕方がないので、この大会で自分ができる最高のパフォーマンスができるよう、4種目しっかりと整えました。あとはもう、しっかりと自分を信じただけです」

意味の異なる2枚目の金メダル

リオデジャネイロ五輪の代表にも内定。新たな自信を胸にさらなる高みを目指す 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 200メートル個人メドレーで敗れた後、梅原コーチは瀬戸に「これは試練だね」と話している。今回と同様のケースが、来年のリオ五輪でもあるかもしれない。その時にも、短期間で修正する能力が重要となる。日本代表の平井伯昌監督も、大会中の修正力をチーム全体の課題として挙げた。ただ、瀬戸らリオ五輪の内定者は、来年の代表選考会という緊張感のある場を、五輪のリハーサルとして活用できるメリットがある。

 今大会で試練を乗り越え、金メダルを獲得したことで、瀬戸は大きな自信と経験を手にした。

「こんなにもがいたのは初めてです。しかもこんな大きな大会で経験したので、自信になりました。もぎ取りにいった金メダルなので、2枚目の意味は違います」

 新たなメダルと新たな自信を胸に、大也(ダイヤ)の輝きは増すばかりだ。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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