瀬戸大也とともに、再び世界の頂点へ 担当コーチも称賛する勝負強さの源泉

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世界一を争う2人の性格は正反対

瀬戸大也(左)を指導する梅原孝之コーチに愛弟子の魅力を語ってもらった 【スポーツナビ】

「萩野(公介/東洋大)はまじめにコツコツと練習するタイプなのに対して、瀬戸(大也/JSS毛呂山)は基本逆ですね。練習は好きではないし、地味にコツコツやる感じではない。たまに休みを与えないと、ストレスが爆発してしまうようなタイプです。ただ、やるときにはやるので、何をするか分からない面白さはあります」

 瀬戸を小5から指導する梅原孝之コーチは、同級生で少年時代からライバル関係にある萩野と比較し、愛弟子の魅力をこう表現した。

“やるときはやる”瀬戸は、2年前にバルセロナで行われた世界選手権400メートル個人メドレーで同種目の日本人初となる金メダルを獲得するなど、世界を相手に堂々たる結果を残している。今季も同種目世界ランキング2位につけており、ロシア・カザンで行われる今大会(競泳は8月2日〜9日開催)でも、2連覇の期待が懸かる。

 世界一を争うトップスイマーとなった瀬戸は、どのような環境でその才能を伸ばしてきたのだろうか。また、彼の魅力であるメンタルの強さの秘訣は何なのだろうか。梅原コーチにその道のりと世界選手権に向けた意気込みを語ってもらった。

ポジティブに、考えて動ける人間を目指して

幼いころの瀬戸について、ポジティブで泳ぎのセンスを感じたという梅原コーチ 【スポーツナビ】

 瀬戸が水泳を始めたのは5歳からで、小学生の時から数々の大会に出場。当時は、JSS八王子スイミングスクールで指導していた梅原コーチも、そのうわさは耳にしていた。その後、JSS毛呂山に移り、小5になった瀬戸の担当となる。梅原コーチは当時をこう振り返っている。

「今も一緒ですけれど、ポジティブですごく高い目標を持っている子だなと感じました。泳ぎに関しては、センスを持っている子だと思いましたね。ひじを立たせて泳ぐことがその頃からできていましたから」

 その性格は彼以上にポジティブだという父親の教育のたまもの。ネガティブな発言をしたときに一番叱られたということもあり、瀬戸は常に前向きに物事に取り組んできた。

 梅原コーチの基本的な指導方針は、「自分で考えて動けるようになること」。指示されないと何もできないような人間にならないようにすることを意識している。元来縛りつけられると窮屈に感じるタイプの瀬戸には梅原コーチの指導が合っており、任されることでより一層高い意識を持ち、自主的に練習に取り組むようになった。

 言葉のかけ方にも、細心の注意を払う。どういうタイミングで、どう言えば一番伝わるのか。瀬戸の場合はあまり長々と話しても頭に入らないので、スタート直前になるべく短い言葉で話すことを心がけているという。担当当初から瀬戸の両親とも密にコミュニケーションを取り、「選手、コーチ、両親」が三位一体となって強化に励んできた。

転機となった中1の全中

中1の全中は瀬戸にとってキャリアの転機となるレースとなった(写真は中学2年時のもの) 【写真:アフロスポーツ】

 瀬戸のキャリアの転機となったレースとして、梅原コーチの印象に残っているのが、中学1年時(2007年)に出場した全国中学校水泳競技大会(全中)の200メートル個人メドレーだ。瀬戸は1年生ながらギリギリの9位で決勝に残ると、決勝ではナショナル選手標準記録を切って6位入賞。その後のナショナル合宿への参加資格をつかんだ。

「大会には当時の目標タイムをクリアすることを目指して臨み、予選でそのタイムを切って決勝へ進めたので『たいしたものだな』という話をしました。でもせっかく残ったんだから決勝の目標を決めようという話になり、すごく高い目標だけれど、ナショナル記録を次のステップにしました。タイムもそうですが、あそこで一気にいろんなものを経験できました。その後の合宿も含めて、中1の全中は彼がぐんと成長した時期だと思っています」

 この大会で大きな経験を積んだ瀬戸は、翌年の全国JOCジュニアオリンピックカップの400メートル個人メドレーで萩野に初勝利。同世代のトップを争う選手に成長し、それ以降2人は勝ったり負けたりを繰り返しながら、しのぎを削り続けている。

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