キヤノン・小野澤宏時が見据えるもの 37歳のラガーマンが語る、現状と未来
国際試合トライ数、世界歴代5位のウイング
日本代表として、ワールドカップでも活躍した小野澤。国際試合トライ数は世界歴代5位 【写真:ロイター/アフロ】
誰が呼んだか「うなぎステップ」。体幹の強さとしなやかな身のこなしで、人垣をするすると突破する。「ものごとは一言では、言い切れなくなっていて」。自らの皮膚感覚をより端的に表現し、かつ誰も傷つけないであろう単語を一つひとつ選ぶ人でもある。
サントリー時代のケガが長引く
しかし、移籍初年度の出場機会はわずか1試合にとどまった。シーズン途中の戦線離脱を余儀なくされる。ひとつのトラブルをきっかけに、すべてのバランスを崩していたのである。
始まりは、前所属先で最後から2つ目のゲームでのプレーだった。2013年8月30日、東京は秩父宮ラグビー場。NTTコムとのトップリーグ開幕節の前半終了間際、相手に激しくぶつかられながら、片手一本をインゴールへ伸ばす。「ここで取ったら試合が決まるなぁって思ったから……」。ダイブ。着地。左肩の関節部分がタックルの下敷きとなった。トライを奪うと同時に、小野澤は交代した。
痛みは新天地でも引きずる。腕を大きく振って走れないから、「足の力だけ」で無理に走ろうとしてしまう。今度は膝まで痛くなった。悪循環である。
脱臼を繰り返す左肩を手術
「1度目はタックル練習で外れて、2度目はボールゲームで相手にタッチした時に外れて……」
決定打は、「3回目」だった。
「ブレイクダウン(ボール争奪局面)の練習。相手を逃がさないようにホールドした(抑えた)瞬間に…。手が衝撃で(向こう側へ)持っていかれたんじゃなく、自分で腕に力を入れた瞬間、カコッと」
シーズン終盤の1月16日。「もう、ダメだ」とオペに踏み切った。全体練習への本格的な復帰は、今季の7月21日まで待たねばならなかった。