キヤノン・小野澤宏時が見据えるもの 37歳のラガーマンが語る、現状と未来
南アフリカの強豪・ブルズを迎え撃つ
決定力のあるウイングとして、サントリー時代はチームの優勝に貢献した 【写真:アフロスポーツ】
小野澤は社会人2年目の01年、サントリーの一員としてウェールズ代表に45対41で勝利。直後に日本代表デビューを飾った。今度のブルー・ブルズ戦は復帰間もないため出場は難しいだろうが、記憶の地層を掘り返してこう展望する。
「若者にとっては、いい刺激になるんじゃないでしょうか。大きな目標設定にチャレンジして、世界の空気に触れられます。自分と世界の比較も明確にできる。僕もサントリーの2年目、ウェールズ代表とやった。当時は、割とシンプルなことしかを考えてなかったと思います。やるからには勝つし、持ったらトライを取るし、みたいな。楽しかったですし、代表に入るきっかけにもなった……。そういう意味でも、チャンスだと思います」
トライを取るだけではないチームへの貢献
「落車が怖い、ということもあって。『練習もやるし、いいでしょ』みたいな若さはない。もし何かあったら洒落にならないなぁと、いまは、言うことを聞いています」
小野澤のすごみは、「うなぎステップ」を繰り出す前の動きにもある。グラウンド後方、タッチライン際に立つウイングというポジションから、仲間が円滑に動けるよう明確な指示を出す。チーム戦術と相手守備網の穴場を踏まえ、好角度から球を受け取る……。「ザワさんがいると、後ろから声が聞こえてやりやすい」は、サントリーやジャパンの同僚の決まり文句だった。
「いままでで一番、いい状態で過ごす」
「例えばメンバー編成の過程で外されて、『何だよ』と落ち込む。その選手は、試合に出たいからそこまで沈むのであって。キヤノンの選手にはそういう熱量がある。これは周りの選手の関わり次第でよくも、悪くもできる。熱量は、方向性を決めてあげたらすごい爆発力になる。しっかりベクトルを決めて、いい練習をして……個性の色を消さずに、チームという袋に入れていきたい。そう思って過ごしています」
復帰後初めて身体をぶつける練習をしたら、「怖いっすね」。ただ、声は明るい。
「もうリハビリレベルではなくなった。(練習が)できたという経験を重ねて、怖さを取っていく作業をする段階までは来たかな、と。去年はテープで固定して、ここ(肩)が触れない。痛い。練習後は『あぁ、きょうは無事に終わった……』。ただ今年は『まだ怖さはあるけど、何とか、よさそう』。その気持ちの差はすごく、大きい」
個人目標は「いままでで一番、いい状態で過ごす」である。
「毎日いい準備をして、いい競争して、いいコミュニケーションを取って、チームにプラスになるものを全て提供して、若手も成長して……。で、自分が出る、みたいな」
若さ、年輪、勢い、思慮深さ。たくさんの色彩がひとつに折り重なった集団のたのしさを、考えるシニアプレイヤーは深いところでわかっている。
南アフリカの強豪が来日!キヤノンと31日に激突
【町田 ワールドマッチラグビー 実行委員会】
スーパーラグビーで優勝経験もあるブルズのほとんどは、ブルー・ブルズの選手であり、南アフリカ代表にも多くの選手を輩出している。この強豪に対して、キヤノンはどのように戦うのか? 注目の一戦は31日19時5分から、町田市立陸上競技場で行われる。
[対戦カード]キヤノンvs.ブルー・ブルズ
[日時]7月31日(金)19時5分キックオフ予定
[試合会場]町田市立陸上競技場