誰もが納得したNBAファイナルの結末
覇者ウォリアーズが体現した原点

再び流れが変わった第4戦

カリー(右)、グリーン(左から2人目)らを擁する層の厚さを見せつけたウォリアーズは、第6戦で見事な逃げ切りを見せた
カリー(右)、グリーン(左から2人目)らを擁する層の厚さを見せつけたウォリアーズは、第6戦で見事な逃げ切りを見せた【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 このままレブロンの力でキャブズが優勝していたら、今ファイナルは米スポーツ史上に残る番狂わせとして記憶されていたはずだ。しかし、そこからウォリアーズが巻き返し、歴史的シーンが演出されることはなかった。


 それを残念に思う人がいる一方で、最終的により“優れたチーム”が勝ち残ったことに後味の良さを感じるファンも多かったかもしれない。


 流れが再び変わったのは第4戦。この試合ではカーHCは今季を通じて控えとして起用してきたアンドレ・イグダーラをスタメンに組み込み、スモールラインナップを採用する。おかげで試合のテンポが上がり、人材不足のキャブズはウォリアーズのハイペースの攻撃についていけなくなった。


 思い切ったスタメン交代以降、第4〜6戦のウォリアーズはすべて100得点以上と自慢のオフェンスが復調。そして、決着戦となった第6戦は、このシリーズを、そして両チームの現状を象徴するようなゲームだった。


 後がないキャブズが最終クォーターに猛追するも、ウォリアーズはカリー、ショーン・リビングストン、イグダーラ、トンプソン、グリーンらが層の厚さにものをいわせて迎撃する。レブロンも最後の力を振り絞って32得点を挙げたが、それでもウォリアーズは余裕を持って逃げ切った。

得点数が少ないMVPの存在

MVPを獲得したイグダーラはシリーズ終了後、レブロン対策に悩み「眠れなかった」とコメント
MVPを獲得したイグダーラはシリーズ終了後、レブロン対策に悩み「眠れなかった」とコメント【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 この試合でのウォリアーズは全6人が9得点以上をマーク。MVPに選ばれたのが、主にレブロンをガードしたイグダーラだったというのも今シリーズを語るのにふさわしいように思えた。


「(レブロン対策を)毎日のように練習のときから考えて、夜に寝るときも考えた。普段は昼寝をするんだけれど、どうすれば勝てるか、どうやってレブロンを抑えるかを考えてしまって、今日は眠れなかった。だからこそ、彼は世界最高の選手なのだと思う。それだけの力を注がないといけない存在なんだ」


 シリーズ終了後、全体会見の壇上でのイグダーラの言葉は、ヒーローの栄光のスピーチにはほど遠かった。実際に、イグダーラの平均16.3得点はMVP受賞者の中では3番目に低い数字でもある。


 ウォリアーズには1人のスーパーヒーローは存在しなかった。しかし、フロアの全員が一丸となることで、レブロンというモンスターを乗り越えた。そんな彼らの姿は、チームスポーツの原点を体現しているかのようだった。


 層の厚さとケミストリーが売り物の大本命と、大黒柱の個人技とハッスルプレーに希望を見いだしたアンダードッグ。それぞれが持ち味を発揮し、見せ場を作ったがゆえに、今年のファイナルは盛り上がった。そして、最後により優れたチームが、誰もが納得する形で勝ち抜いたがゆえに、その結末は見ているものにどこか爽快感を感じさせたのである。

杉浦大介
杉浦大介

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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