敵はどしゃ降りだけ◎ドゥラメンテ=乗峯栄一の「競馬巴投げ!第98回」
女の気持ちを変える拳銃
[写真4]武豊とポルトドートウィユ、超良血が大舞台で素質開花だ 【写真:乗峯栄一】
そこまで様々な用途の爆弾が可能なら「人の気持ちを変える爆弾」を作ればいいんじゃないだろうか。ピカッと光った途端「そうだ、やっぱり独裁はいけない、ちゃんと選挙して、色んな国とも仲良くしなきゃな」とサダム・フセインが思い始めるようなら、戦争も何も必要なかったはずだ。現在の段階では人の気持ちを変えるより、人ごと爆破してしまう方が簡単だということなのだろう。
高校生の頃からずっと「女の気持ちを変える拳銃」というのは夢想してきた。街を歩いていて「あ、いい女、バーン」と打てば、突然その宮澤りえ(すいません、個人的趣味です)がソソッと寄ってくる。
「あの、ほんとにこんなこと、突然で失礼なんですけど、好きです。ああ、こんなこと言って、わたし一体どうしちゃったのかしら、恥ずかしい」と宮澤りえはポッと頬を赤らめる。
これはまあ健康な男なら誰でも夢想することだが、でもこの「気持ち変更拳銃」は流行し始めると、あっちでもバン、こっちでもバン、やかましいことこの上ない上に、「突然で失礼なんですけど」と言いながら、すれ違う男に頭を下げる女が街中にあふれて収拾がつかなくなる。「おメエなんかに気持ち変えられてたまるか」という女たちによって、迎撃用の「気持ち変更パトリオット」もすぐに開発されるに違いない。
「シルクトゥルーパーから十万ずつ総流し」
[写真5]道悪ならベルラップの出番 【写真:乗峯栄一】
たとえばハイセイコーの単勝支持率を30年ぶりに更新した05年ダービー。
「ディープインパクトに決まってるやろ、これ以外を買う人間の気持ちがしれんわ」とWINSでそういう声がしたら、懐から小さなコルトを取り出して、窓口手前でそのディープおじさんに照射する。このコルト、本体は水鉄砲のように小さいが、28億個・人ゲノム遺伝情報解読から生まれた高性能「意識・行動アンバランス銃」だ。
「ディープインパクトから十万ずつ総流し」と言おうとしたおじさんの口から「(最低人気)シルクトゥルーパーから十万ずつ総流し」という声が出る。
「あれ?」とおじさんは慌てて首を振る。
「オレ、いま、シルクトゥルーパーって言った? 違う、違う、全然違うで、おれが言いたいのはシルクトゥルーパーから十万ずつ総流しっちゅうことや」
そう言ってまた「あれ?」と首をひねる。
とにかく「アンバランス銃」照射によって「ディープインパクト」はすべて「シルクトゥルーパー」に置き換えられる仕組みになっている。ダービー当日は全国のWINSも競馬場も「シルクトゥルーパー」という予想外な馬名が怒号のように飛び交ってパニックになる。
◎みんなが「来ない」と思っている馬が「来る」確率
◎みんなが「来る」と思っている馬をみんなが「買えない」確率
要はこの二つの確率比較にかかっている。