敵はどしゃ降りだけ◎ドゥラメンテ=乗峯栄一の「競馬巴投げ!第98回」

乗峯栄一

女の気持ちを変える拳銃

[写真4]武豊とポルトドートウィユ、超良血が大舞台で素質開花だ 【写真:乗峯栄一】

 たとえば新兵器博覧会などと言われたイラク戦争のときも思った。強いマイクロ波を放って通信妨害を起こす電磁波爆弾とか、地下深くを専門的に狙うバンカーバスターとか、尺玉花火のように内部の無数の爆弾が次々破裂していくクラスター爆弾とか、アメリカという国は経済力にものを言わせて色んな兵器を作っているもんだと感心した。

 そこまで様々な用途の爆弾が可能なら「人の気持ちを変える爆弾」を作ればいいんじゃないだろうか。ピカッと光った途端「そうだ、やっぱり独裁はいけない、ちゃんと選挙して、色んな国とも仲良くしなきゃな」とサダム・フセインが思い始めるようなら、戦争も何も必要なかったはずだ。現在の段階では人の気持ちを変えるより、人ごと爆破してしまう方が簡単だということなのだろう。

 高校生の頃からずっと「女の気持ちを変える拳銃」というのは夢想してきた。街を歩いていて「あ、いい女、バーン」と打てば、突然その宮澤りえ(すいません、個人的趣味です)がソソッと寄ってくる。

「あの、ほんとにこんなこと、突然で失礼なんですけど、好きです。ああ、こんなこと言って、わたし一体どうしちゃったのかしら、恥ずかしい」と宮澤りえはポッと頬を赤らめる。

 これはまあ健康な男なら誰でも夢想することだが、でもこの「気持ち変更拳銃」は流行し始めると、あっちでもバン、こっちでもバン、やかましいことこの上ない上に、「突然で失礼なんですけど」と言いながら、すれ違う男に頭を下げる女が街中にあふれて収拾がつかなくなる。「おメエなんかに気持ち変えられてたまるか」という女たちによって、迎撃用の「気持ち変更パトリオット」もすぐに開発されるに違いない。

「シルクトゥルーパーから十万ずつ総流し」

[写真5]道悪ならベルラップの出番 【写真:乗峯栄一】

 競馬で大穴を取る方法というのは、みんなが「来ない」と思っている馬を買って、その馬が来るのを待つことだと思われているが、実は違う方法もある。みんなが「来る」と思っている馬を、みんなが買えないようにすることだ。

 たとえばハイセイコーの単勝支持率を30年ぶりに更新した05年ダービー。

「ディープインパクトに決まってるやろ、これ以外を買う人間の気持ちがしれんわ」とWINSでそういう声がしたら、懐から小さなコルトを取り出して、窓口手前でそのディープおじさんに照射する。このコルト、本体は水鉄砲のように小さいが、28億個・人ゲノム遺伝情報解読から生まれた高性能「意識・行動アンバランス銃」だ。

「ディープインパクトから十万ずつ総流し」と言おうとしたおじさんの口から「(最低人気)シルクトゥルーパーから十万ずつ総流し」という声が出る。

「あれ?」とおじさんは慌てて首を振る。

「オレ、いま、シルクトゥルーパーって言った? 違う、違う、全然違うで、おれが言いたいのはシルクトゥルーパーから十万ずつ総流しっちゅうことや」

 そう言ってまた「あれ?」と首をひねる。

 とにかく「アンバランス銃」照射によって「ディープインパクト」はすべて「シルクトゥルーパー」に置き換えられる仕組みになっている。ダービー当日は全国のWINSも競馬場も「シルクトゥルーパー」という予想外な馬名が怒号のように飛び交ってパニックになる。

◎みんなが「来ない」と思っている馬が「来る」確率

◎みんなが「来る」と思っている馬をみんなが「買えない」確率

 要はこの二つの確率比較にかかっている。

2/3ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント