競馬場に癒やしペッパー 宮記念◎サドン=乗峯栄一の「競馬巴投げ!第94回」

乗峯栄一

そういうロボット、もう出来てるでしょうが

[写真1]混戦の高松宮記念、実績上位ミッキーアイルだがドカ負けも不安で 【写真:乗峯栄一】

 もう10年ぐらい前だろうか、阪神競馬場の帰り、ヤケ酒飲もうと西宮北口のショッピングビルに行ったら、フロアに鎖につながれた犬がいた。いくら子犬といっても糞でもしたら大変じゃないかと思ったが、よく見るとアイボとかいうロボット犬だった。

 近づくとシッポを振ってキャンキャン喜ぶ。手を出すと噛もうとするので怒鳴ると「ごめんなさい」という雰囲気で顔を手で隠して上目使いで見る。かわいい。

 こういうとき、ぼくは何を考えるかというと、こういう従順でかわいいロボットが出来るのなら、つまりもう出来てるんじゃないのかということだ。

 アイボとかいうロボット犬を開発したソニーとか、二足歩行ロボットのアシモなんかを開発したホンダとか、そういうところは「もう会社の奥では出来上がってんじゃないの?」と言いたくなる。

 最近では、缶コーヒーのCMに「ペッパー」とかいうロボットが出てくる。このロボットは、動きはそれほどでもないが、語りかける人間の言葉に対応して、それに即した応答をするということだ。人間どうしの会話では、相手にも自我があるから、「こちらを癒やす」ことだけに専念は出来ない。でも、ロボットの場合はこちらを包むことだけを考えられる。これが素晴らしい。大いに役立つと思われる。

 このペッパー・ロボットはソフトバンクが開発したらしいが、ソフトバンクにも「そこまで開発したなら、もう出来てるでしょうが。10年前のアイボに、言葉癒しのペッパーを総合したものが」と言いたくなる。

わがハイテクロボはなぜかCAの制服

[写真2]ダイワマッジョーレの前走は強かった 【写真:乗峯栄一】

 わがハイテクロボットはなぜか、キャビンアテンダントの制服を着ている。なぜかは分からない。ただ、わが好みをどこかで調べたんだろうとしか言えない。

「ああ、今日も疲れた」と言いながら玄関を開けると、わがハイテクロボットは「わあ、お帰りなさい」と近づこうとしながら、いきなりブラウスのボタンを外し始める。でも鎖に引っ張られているから足がもつれて倒れる。

「お前はどうしていつもそんなに下品なんだ」

 ぼくは胸のはだけたCAロボットを見下ろして溜息をつく。

「ああ、ごめんなさい、わたし今日もフライトで疲れてて訳が分からなくなって、あなたを見てつい嬉しくなってしまったの」

 人工CAは後ずさりし、はだけた胸を押さえながら涙声を出す。めくれたスカートの下からスラリとした脚が見え、慌てて隠そうとする、そのはずみでピンクのガーターベルトも見える。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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