意味不明、4月の皐月◎ドゥラメンテ=乗峯栄一の「競馬巴投げ!第96回」

乗峯栄一

「火星から来た」は意味不明か?

[写真1]京成杯の勝ち馬ベルーフ、スプリングS4着から巻き返しへ 【写真:乗峯栄一】

 10年ぐらい前だが、京都の小学校に包丁持って乱入した男が、「警察の取り調べに対して“火星から来た”などと意味不明の供述をしている」という報道があった。しかし「火星から来た」って意味不明だろうか? 意味はよく分かるんじゃないか。「火星から来たなどと嘘を言っている」と決めつけると、ほんとに火星から来ていたときに苦しいことになるから、「火星から来たなどと疑わしいことを言っている」というのが正しい報道だろう。

「ただいまハイジャック犯が操縦室に乱入し“口向きが悪いんや、Dハミを使え”などと意味不明のことを叫んでいます」と乗務員が報告しても、もし乗客が競馬関係者の団体だったらどうだ。「いや、意味分かるよ」「私も分かる」「私も」と、ほとんどの人間が「意味分かる」の方に手を上げる。「“飛行機の座席は外枠絶対有利や。揉まれずに千歳まで行ける”などと意味不明のことを言っています」と報告しても「それも一理ある」と7割方は「意味分かる」の方に賛同する。

 今回は思い出に残る“意味不明”文を取り出してみたい。

九死に猫を噛む

[写真2]須貝厩舎のベルラップ、桜花賞2着のクルミナルに続くか 【写真:乗峯栄一】

 関西のタレントで稲垣早希(いながき・さき)という女性がいて、彼女、ブログの投稿数とサイコロの出目でその日の旅費が決まるという「ブログ旅」という面白い番組をやっていた。ただその中で、強烈に印象に残る言葉がある。

 旅費が底をつき、サイコロを振る前に、ディレクターから「早希ちゃん、いよいよ背水の陣ですね?」と聞かれ、稲垣早希は「何ですか? それ」と聞き返す。さらに「あ、それって、ひょっとしてあれですか? 九死に猫を噛むってやつですか?」と続けた。

 これは多分、「九死に一生を得る」と、「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」が一緒なったものだと思うが、「九死みたいな大変なときに猫噛んでてどうする!」とTVに向かってツッコンだ。

 でも「九死に猫を噛む」はなかなか言えない。「面白いことを言ってやろう」と意図していては決して出ない言葉だ。ぼくなどもこういう言葉を考えたいと思うが、“考えよう”としては決して出てこない。記念碑的一文だ。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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