戦力充実の東海大、「帝京超え」を狙う 大学ラグビー界に変化を起こせるか?

向風見也

6連覇中の帝京大の対抗馬へ

5月5日に行われたニュージーランド学生代表戦で、関東学生代表の主将を務めた東海大のFL藤田(中央右、黒いヘッドキャップ)と、PR平野(中央左、青いヘッドキャップ) 【赤坂直人】

 断言できる。いまのこの国の大学ラグビー界は、現状、帝京大の独壇場だ。

 大学選手権は6連覇中。前年度の日本選手権では、国内最高峰のトップリーグ勢であるNECを31対25でやっつけた。食と鍛錬の環境が培う頑健さ、雑務を上級生が率先して行う文化、それらに憧れて入学する世代最高クラスの選手たちのゲーム理解度……。1996年就任の岩出雅之監督が「第一は誠実さ」とうたうなか、王者は孤高の存在となりつつある。

 そんななか――。

 対抗馬、求ム。

 ファンやマスコミに渦巻く潜在ニーズに本気で応えようとする、ひとつのチームがある。東海大だ。関東大学リーグ戦1部所属の雄で、帝京大と同じく戦後創部のクラブである。

藤田主将「チャンピオンシップの文化に」

 主将はフランカーの藤田貴大(4年)である。いつだって顔のどこかにあざをつくって、知り合いと会えば満面の笑み。一見、隙がなさそうな優等生発言にも、どこか大らかさをにじませる。

「4年生が中心に仕事をしていって、それがチャンピオンシップの文化につながっていけばいいなぁと思います」

 エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが初めてプロコーチを務めた場所でもある東海大は、1998年着任の木村季由監督のもと、系列校との連携を強化。体育学部の教授との連携も図り、身体づくりと規律の徹底、基本プレーの研究に力を入れてきた。

 いまのジャパンで主将を務めるリーチ マイケル(東芝/チーフス)が大学2年だったころから、3年連続で全国4強入り。そのリーチが3年だった2009年度には、当時は無冠だった帝京大と決勝を戦っている。

 一昨季からは土井崇司テクニカルアドバイザーが加入。東海大仰星高を冬の全国優勝2回という強豪に引き上げた理論派だ。コーチングには厚みが生まれた。

日本代表の練習生にもなったエース石井

東海大の高速バックスリーとして活躍するWTB/FB近藤(写真は関東学生代表として出場したニュージーランド学生代表戦) 【赤坂直人】

 そして、2015年度。確かな積み上げのもとに充実した戦力が並ぶ。初優勝を狙う。

 2つの外国人枠を争う留学生勢では、ナンバーエイトのテビタ・タタフ(1年)にセンターのアタアタ・モエアキオラ(1年)という目黒学院高出身の新人コンビが早くも高評価。指揮官によれば、「勤勉。単なるパワープレーヤーじゃない。ウチの日常のコンタクトレベルは上がった」。しなやかに駆ける札幌山の手高(リーチの母校)出身のロック、テトゥヒ・ロバーツ(2年)も、立場は安泰ではない。

 タタフらとともに20歳以下日本代表に合流中であるフルバックの野口竜司(2年)は、好機と危機に強い要だ。昨季はジャパンの練習生にもなったウイングの石井魁(4年)は、走力を得点力に無駄なく変える。東京の保善高では全国レベルの経験は得られなかったが、「挑戦したい気持ちがあって、東海大に入った」。器用なランナーであるウイングの近藤英人(4年)と並べば、学生界屈指の両翼の出来上がりだ。

 プレーの起点であるスクラムでは、後列も「ブレイク(次の攻防への準備)より、まずはプッシュ」と、フォワード8人が一体となる。右プロップの平野翔平(4年)は、周りから「胸のくぼみがないから相手は苦しいはず」とうたわれる錨(いかり)。この人の押しの強さを、皆が援護するわけだ。

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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