世界で戦うために――服部勇馬の現在地 マラソン挑戦へ「今は弱点克服の時期」

加藤康博

目指すフォームが少しずつ形になってきた

スピード練習に取り組む中で、箱根駅伝2区での区間賞は狙い通りだった。今後はより長距離を余裕を持って走るためのスピードをつけていく 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】

 秋からは箱根駅伝に向けた練習へと切り替えたが、その間も東京マラソンの序盤のハイペースに対応することを想定していた。箱根2区で区間賞争いをするためには最初の10キロを28分30秒程度で通過することが求められる。マラソンを見据え、ゆとりのあるフォームでスピードを上げることをここで目指した。

 そして狙い通り、箱根では2区で区間賞を獲得。その後マラソンへ向けた本格的な練習に入る段階で足に痛みが出たため東京マラソンは欠場したが、目指すフォームは少しずつ形になってきている。
「今、トラックでスピードを上げてもかなりリラックスした状態で走れていると思います。マラソンに向けた練習の成果は出ているので、次のチャレンジにもつながってくるはずです」と酒井監督は服部の変化を口にする。

マラソンへの取り組みで確実に変化

 この春はスピードを高める練習を中心に行い、同時にフィジカル強化のための補強運動も以前よりレベルを上げた内容で取り組んでいる。ともに服部自身が課題としてあげる部分であり、今はその弱点を克服する時期と話す。
「自分の一番の課題は速いペースで押していく力がないこと。どうしてもまだペースが速いときついと考えてしまうので、それを振り払いたいと考えています」

 現在の服部の5000メートルのタイムは、30キロや駅伝での結果からみれば、少し物足りない感があり、ここを上げていくことが結果的にハイペースで押していく際の余裕になるだろう。

 本人も5000メートルで13分46秒00の日本選手権参加標準記録Aを突破することに自信を見せており、今月中に記録を狙いに行くプランも立てている。そしてこのトラックシーズンの終盤には、1万メートルの27分台も見据えている。
「マラソンを走るためにはエネルギー効率のいいフォーム、スピード、スタミナ、そして筋力など多くのことが必要であり、同時に食事やケアも重要になります。それを総合的に上げていかなければなりませんが、勇馬は練習でスピード、スタミナの両方を高いレベルで求めていける力があります。今はスピードを中心に鍛える時期ですが、今後トラックレースの前に長めの距離走を入れることも考えています。しかし彼は抵抗感を示さないでしょう。なぜなら昨年の夏からその準備をしているからです。同じ1万メートル27分台でも、マラソンを視野に入れた練習をしている中で出してこそ価値がありますので、そこを目指していきます」(酒井監督)

 レースの出場こそならなかったが、マラソンへ向けた取り組みは確実に服部を変えている。今後、どんな形で結果につなげていくかに期待したい。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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