超スピード時代を迎えた箱根駅伝 1区、2区の争いはさらにし烈に

折山淑美

今年もガチンコ対決

青山学院大は10時間50分を突破する10時間49分27秒という驚異的なタイムで優勝 【写真:アフロスポーツ】

 どの区間もミスがなかった上に、5区神野大地(3年)の1時間16分台の爆走も加わった青山学院大が圧勝した今年の箱根駅伝。往路、復路ともにコース変更で参考記録になった東洋大の最高記録を上回っただけでなく、総合でも10時間50分を突破する10時間49分27秒という驚異的なタイム。まさに“強すぎる!”と言うしかないような結果だった。

 またしても5区の重要性を見せつけられる結果になった箱根駅伝だが、今回も見ている側を熱くしてくれたのは、昨年に続く1区の攻防に加えて、2区のエースたちのガチンコ対決だった。

スピードレースへの警戒心

2011年の大会で1区を走った大迫傑(早稲田大)から箱根駅伝の「スピード化」が加速した 【写真:アフロスポーツ】

 早稲田大が総合優勝した2011年。同大は前年にハーフマラソン日本ランキング2位の1時間01分47秒で走っていたスーパールーキーの大迫傑(現・日清食品グループ)を1区に起用し、2位の日本大には54秒差、3連覇を狙う東洋大には2分01秒の大差をつけて飛び出した。早稲田大は結局、激しい追い上げを見せた2位・東洋大を21秒だけ振り切って優勝。この大会から1区の重要性は一気に高まった。

 12年にも大迫が再び登場すると、それに日本体育大の服部翔大(現・Honda)が食らいつくレースに。服部が早稲田大に23秒差の2位になっただけではなく、3位の駒澤大は24秒差、続く東洋大も31秒差にとどめたように、有力校はそろって力のある選手を使うようになった。

 そして昨年は3冠を狙う駒澤大が、出雲駅伝(以下、出雲)、全日本大学駅伝(以下、全日本)に続いて3本柱の一人である中村匠吾(当時3年)を1区に起用すると、早稲田大は大迫を、東洋大は主力の田口雅也(当時3年)を、そして日本体育大は服部と並ぶ2年生(当時)エースの山中秀仁を使った。大迫がハイペースに持ち込んだこのレースでは1位になった山中のほか、2位・中村と3位の田口が1時間01分台で走り、明治大の文元慧(当時3年)も1時間02分02秒で続いた。その12秒あとに大迫が、さらに青山学院大の一色恭志(当時1年)も1秒差で続く接戦。上位3人はハーフマラソンに換算すれば、1時間00分台で走っていたことになるほどのハイレベルな戦いを見せた。

 今年も、昨年11月の全日本で駒澤大がエースの村山謙太(4年)を1区に起用したことで、各校にもスピードレースになることへの警戒心が高まっていた。結局、駒澤大は村山と並ぶ2本柱の一人である中村を起用。早稲田大はチーム事情からか安定感のある中村信一郎(3年)にしたが、東洋大は実績のある田口を使い、青山学院大も補欠だったスピードランナーの久保田和真(3年)を当日変更で入れた。また明治大も今季好調なスピードランナーの横手健(3年)を起用し、エース格がそろった。

強豪が一瞬のうちに2区へ中継

1区で激しい戦いをみせた横手健(明治大)、田口雅也(東洋大)、中村匠吾(駒澤大)、久保田和真(青山学院大) 【写真:アフロスポーツ】

 その戦いはし烈だった。10キロ通過は28分51秒と、大迫がペースを作った昨年より遅かった集団が、数回の揺さぶり合いをしてから本格的に動きだしたのは15キロすぎから。まずは青山学院大の久保田がペースアップすると13人の集団のなかから駒澤大の中村と東洋大の田口、明治大の横手が抜け出して先頭集団を形成。16キロすぎには、遅れ始めた中村が1キロほどで再び追いついてくると、18.7キロで少し前から先頭でペースアップしていた田口がスパート。それに中村が付き、横手と久保田が少し遅れた。

 だがそれだけでは決まらなかった。遅れていた二人が追いつくと、19.7キロ付近で今度は中村がペースアップし、横手と田口が少し遅れる態勢に。さらに中村はラスト1キロからスパートをしたが、久保田が粘りきって1時間02分00秒で中継したトップの中村に1秒遅れ。粘った横手も7秒差で田口は12秒差と、強豪4チームが一瞬のうちに2区へ中継を終了した。

1/2ページ

著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント