NEXT4の目立ちたがり屋・高橋健太郎 未完の大器はオポジットとして大成なるか
ストレートすぎるほどの感情表現
感情を表に出して戦う「熱さ」こそ、高橋最大の武器。世界と戦うために、必要な資質だ 【坂本清】
「アイツが打つ、と相手にバレバレでブロックが何枚来てもいい。チャンスで決められなかったのは自分だから、絶対にここは打たせてくれ、打ってやると思っていました」
自らのスパイクがブロックされ、フルセット負けを喫すると、ユニホームを頭までめくり上げ、顔を隠した。
「情けなくて、恥ずかしかった。何やってるんだ、と思ったら悔しくて泣けてきました」
ストレートすぎるほどの感情表現。まさにそれこそが、高橋が持つ最大の武器だと、筑波大学の監督として高橋を指導し、全日本男子コーチも務める秋山央は言う。
「負けた試合とか、自分の調子が悪い時は手が付けられないぐらい暴れるし大変ですよ(笑)。でもね、その姿勢は教えてできるものではない。ジャンプ力とか技術と同じく、持って生まれた才能なんです。世界と戦うためには、絶対に必要なもの。技術や経験はまだまだ足りないかもしれませんが、身体能力や潜在能力は世界のトップ選手と変わらないものがあり、なおかつ熱い。とても大切な要素を持った、これからが楽しみな選手です」
オポジットとして、求められるもの
南部監督はMB出身の高橋に、オポジットとしてのブロック力を期待している 【坂本清】
「オポジットの選手は攻撃力に加えて、ブロック力、特に1枚で相手を止められる力を持った選手が望ましいんです。相手のレフト、特にチームで攻守の中心となる選手とオポジットの選手がマッチアップすることが多い。そこ(相手レフト)をどう止めるか、というのは勝敗につながる大きなポイントです。オポジット中心の攻撃をしてくるチームには、特にラリー中は2枚で(オポジットを)止めに行っても裏をかかれて(ブロックが)1枚になったレフトに決められることが非常に多かった。技術や経験、試合の駆け引きという点で高橋は清水(邦弘=パナソニック)にまだまだ及びませんが、1枚で相手を仕留めるブロックに関しては大いに期待できる。その可能性に賭けてみたいと思いました」
キューバ遠征時もレフトエースをブロックで仕留め、ワンタッチで幾度もプレッシャーをかけただけでなく、ブロックの上から攻撃するなど、期待以上の活躍を見せており、南部監督も「ワールドリーグでは出場機会を多く与え、経験を積ませたい」と話している。
何より、そのチャンスを誰よりも強く望むのは高橋自身だ。
「どれだけ練習しても『うまくなった』と実感できる時って、ものすごく少ないんです。でもキューバでの10日間、代表選手もいるチームと毎日練習試合をしていたら、大げさじゃなく『オレ、うまくなったよな』と心から思える手応えを感じました。今はまだ清水さんに追いつくのも大変なぐらい差があるし、(同世代の)石川にもどんどん差をつけられているけれど、これからもっといろんな経験をして、自分の完成形をつくりたいです」
まだ荒削りではあるが、時折見せるスケールの大きなプレーは、無限に広がる可能性を感じさせる。
経験を重ね、どんな進化を遂げるのか。
どうか小さくまとまらないように、と願いを込めながら。自他共に認める“目立ちたがり屋”のこれからに、大いに注目してほしい。