村井チェアマン「再発防止案を共有する」 愛媛FCの不適切な会計処理に制裁

スポーツナビ

虚偽の申告=ライセンスの剥奪ではない

不適切な会計処理が発覚し、1月に会見を行った愛媛FCの亀井文雄社長 【写真は共同】

――前回の会見でも同様の質問をしたが、愛媛FCがクラブライセンスを維持しようとしてやったことではないという結論なのか?

 実際、今回の赤字決算であらためて(ライセンスの審査を)精査してみても、債務超過状態ではありませんし、今年度は黒字です。(粉飾をした)過去2年については赤字ではあったのですが、3年連続ではありません(編注:債務超過状態であるか、あるいは3年連続赤字である場合、クラブライセンスは交付されない)。

 そういう意味ではライセンスを維持するために改善した、あるいはFIB(クラブライセンス交付第一審機関)の調査資料を改善したというより、常日頃「健全経営をする」「赤字にはしない」という経営陣の言動が、彼(元経理担当者)を改ざんに向かわせたという可能性はありますけれど、直接的ではないということです。

――愛媛FCがJリーグに虚偽の報告をしていたということになるのか?

 はい、虚偽の報告を受けたということになります。

――そうなると、クラブライセンスの問題になるのでは?

 制裁内容について、虚偽の申告をしたということであれば、当然Jリーグ規約の罰則規定に該当しますので、制裁金の対象となります。一方、虚偽の申告=ライセンスの剥奪ということではありません。あくまで(規約にある)制裁規定に基づいて、今回の制裁となりました。ライセンスはライセンスで、正しく申告された内容(内容を修正した後の決算報告)が、クラブライセンスが発給される前提(を満たしているかどうか)を見ています。そういう意味で言いますと、3年連続赤字ではありませんし、債務超過にもなりませんので、今回はクラブライセンス(の交付)に関して直接的に本件が問題になることはありません。

情報と再発防止案を共有したい

――Jリーグ規約第153条を適用すると1000万円以下の制裁金となるが、300万円となった根拠は何か?

 今回で言うと、(制裁金の)上限を1000万円としているわけですが、これを段階的に見ていきました。いわゆる悪質性、具体的に経営側が指示をした、意図したというところであれば、一番重い内容になったと思います。社会通念上、法的な判断を今回は裁定委員会の先生方にお願いしたわけですが、意図のなかったものならば、半分もしくはそれ以下くらいの量刑になるでしょうというご指示をいただきました。

 それから、これは本人(元会計担当者)も会社側についてもそうなんですが、公認会計士が適正意見を出しているんです。通常、経営者であれば、外部の監査法人・会計士から適正意見が出れば、OKと思うものであろうかと思います。経営者であれば、預金の月末残高とPL(損益計算書)を直接比較しながら実査をしなければいけないんです。公認会計士も当然実査をするものですし、通常であれば債権の確認、照会もするものなんです。もしJリーグに未入金があるのであれば、監査サイド、公認会計士が直接確認するということがあります。この辺りも一部情状酌量するところがあるだろう。一方で、逆に内部統制上、従業員に業務過多でミスが起こりやすい状況になっていて、直接上長がマネジメントで確認すること、ガバナンスが効いていたとも思えない。この辺を斟酌(しんしゃく)しながら、裁定委員会と最終判断をさせていただきました。

――リーグから愛媛FCへ再発防止策や改善の指示は出すのか?

 今後の体制について、第三者調査委員会から改善すべきポイントの提示がありました。たとえば今回、社長は常勤ではなく、非常勤でした。副社長に業務が集中するということがありまして、組織の最終責任者は常駐することが望ましいという意見が出されていました。また従業員の業務ボリュームを考えて、人的、組織的な手当をすべきであるというご意見もいただいておりました。もちろん、そうしたことは考えていく必要があると思います。

 今日の理事会でも数多くの意見が出ましたが、愛媛FCに限らず(Jクラブの多くは)大企業ではありませんので、潤沢に経理担当者がいるわけではありません。マネジメントする側がピッタリとくっついて見られるわけでもありません。経理のチェックするポイントを各クラブと共有してほしいという意見も出ました。場合によっては、ドーピング検査のような形でやれないかという意見も出ました。全部をすべて常に疑ってかかるとなると、コスト的にも運営的にも不適切なので、抜き打ちでJリーグが実査するという体制を組んでみてはどうかというアドバイスを受けました。事件の起こった翌日か翌々日くらいに緊急の実行委員会を開催して伝えましたけれど、速やかにこうした情報の共有と再発防止について幾つかの案を共有したいと考えております。

Jリーグのイメージはここから上がっていく

――今回の件は開幕を目前にしたJリーグ全体のマイナスイメージになったと思うが、これを払しょくする手段は?

 開幕前のこのタイミングで、こういうネガティブな話を皆さんにお伝えすることは確かに残念。こうしたものを隠蔽(いんぺい)したり、うやむやにするよりは、明確に事実をお伝えして、早くクラブが健全経営に移行するのが良いことだと思い、こうした方針を選択しました。リカバリー策につきましては、申し上げたように、Jリーグの40クラブから債務超過クラブがなくなりました。これが粉飾した債務超過でないことをもちろん信じていますし、今回クラブライセンス事務局は相当精査しております。ここから上がっていくフェーズに入っていきますので、クラブが成長していく話をこれからさせていただくことで、還元していければと思っております。

――素朴な疑問として、なぜ公認会計士が気付かなかったのかということがあるが、その点は第三者委員会の調査で明らかになっているのか?

 直接的な第三者委員会の調査内容は、事件に至る動機、なぜ彼がそうしたことをやったのか、そしてクラブにそうした行為をさせる意図があったのかということでした。動機なり背景なりが(調査の)中心になっておりました。会計士の業務の妥当性については多くを割かれていませんでした。今日の理事会にも会計士の方がいらっしゃったのですが、会計士の一般論として幾つかのお話がありました。通常であれば、決算の最終監査をするときに、債権の確認、売り掛け等がある場合は、直接問い合わせて照会して、そういうものも実査するのが一つ。それから、棚卸し資産の立ち会いも必ずやるそうです。

 Jリーグのクラブにそれほど在庫があるわけではないと思いますが、売れ残ったユニホームやグッズなどが資産になるのでしょう。そうしたものの実査と金融機関の残高確認もされるそうなんですが、それができたかというとどうなんでしょうかという問いは、今日の理事会の場でもありました。今回、クラブとしては監査法人、会計士を交代していると聞いています。

 それからおそらく明日発表があると思うのですが、私どもが内々に聞いておりますところによると、愛媛FCには役付役員が6名おります。明日の取締役会で辞任を申し出ているということであります。これは私の立場から申し上げるというより、明日の(愛媛FCの)会見での発表ということになると思います。そちらと合わせて、ご確認いただければと思います。

(取材:川端暁彦)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント