脇澤美穂が語るラストマッチへの思い 「優しさが詰まったリングを見てほしい」
12月23日に首のケガもあり、2度目の引退を迎える脇澤美穂。今回はラストマッチへの思いをつづってもらった 【前島康人】
プロレスが人生と言えるのか…
スターダム女子プロレス、みんなの太陽・脇澤美穂です。12月23日後楽園ホールで再引退します。ぜひ、見届けに来てやってください。
よろしくお願いします。
「あなたにとってプロレスとは?」
最近、この質問が多いのですが本当に困るんですよ。
よくテレビでは人生だとか、全てとか言う人もいるけど、私はそこまで言えるかと言われれば悩んでしまう。
プロレスだから他の人よりもケガをよくする、命の危険だって感じることがある。
結構怖いんですよ。
さっきまで手首があった場所に、全体重が乗ったひざが来たりする。
チョップが喉に当たり、三日ほど声が出なかったこともある。
目に打撃が当たって顔にあざを作ったこともある。
その顔や声のままリングに出たこともある。
そしていまだに痛みが残る首とひじにそっと手を乗せてみると、思っちゃうんですよね。もし一生治らないケガがどんどん増えてきたとしても、私はプロレスが人生と言えるのだろうか?って……。
そう悩み始めた時点で、引退への歯車は回り始めていたのでしょうね。
まず実現しない男女混合の引退試合
再デビューするに当たって悩んでいた私を拾ってくれたのがスターダムさんで、
また辞める時も優しく受け入れてくれたのがスターダムだったのです。
いままでいろんな女子レスラーの引き際を見てきたからでしょうね。
私の歪な歯車を見て、察してくれたのだと思います。
本当にありがたい気持ちで一杯です。
そして今回、みなさんの首を一斉に傾げさせたラストマッチ。
プロレス詳しい人は「すごい!豪華メンバー!脇澤美穂のドリームマッチじゃん!!」となり、詳しくない人なんて「余り者を寄せ集めたの?」なんて言われたりして。
でもこの組み合わせの成分って、なんというか「優しさ」で出来ているんですよ。
本来なら絶対にできない組み合わせなんです。
そもそも男女混合を引退試合でやった人なんてほとんどいなくて、
思いついたとしても、まず実現しない。
辞める時点でもう私のワガママなのに、そんな私がつぶやいた一言、
「憧れの人と組みたい!」
そんな思いを誰かが聞いていて、誰かが伝え、誰かが動き、皆の耳に届いた。
いろんな人の優しさによって実現したカードなんです。
途中で1人でも「バカだなあ。無理だよ」と思っていたら成立しなかったんですよ。
だから見どころは?と尋ねられれば、「人の優しさがリング一杯に詰まっているところ」だと思います。
不細工なケーキに皆さんのトッピングを――
堀口元気さんは私がプロレス界に戻ってきてパワーをくれた人、
望月成晃さんは堀口さんとの試合をこの世の中に実現してくれた人、
イオさんは、これからのプロレス界を担っていく女子プロレスという私を含めた先輩たちが作った道を壊れないように支えていってくれる人、
そして、岩谷麻優ちゃん、3年間一緒に練習して、一緒に泣いて、一緒に笑ってきた人。
ちょっと詩的になっちゃうのですが、リングというスポンジに、大好きなフルーツやトッピングだけ乗せた私だけの引退祝いケーキかな。
デコレーションも変わっていて、店で買うようなきれいなケーキじゃなくて、本当に私が作った不細工なケーキみたい。
でも好きな物しか乗ってないから、まずいわけがないのですよ。
勝負なんだから、全員が大好きというのもおかしな話なんですが、この優しさが詰まった試合こそが、冒頭に書いた「あなたにとってプロレスとは?」という質問へ対する、私の答えだと思っています。
なので私に興味がない人にもぜひ見てほしい。
私が3年間の答えを垣間見ることができると思います。
こんな私の不細工なケーキをお客様の声援というトッピングで少しでもきれいにしてやってください。
12月23日、ラストマッチまで。
あと、少し。
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