番記者が語る本田圭佑への評価と期待 「ミラン浮上に10番の活躍は不可欠」

宮崎隆司

不本意な結果に終わった昨季から一転、今季は主力として活躍する。本田は一体何が変わったのか 【写真:ロイター/アフロ】

 14試合1得点。冬の移籍で加入したというハンデはあったものの、本田圭佑のミラン初年度は不本意な結果に終わった。しかし2年目の今季は一転、開幕から7試合で6得点とゴールを量産し、評価を一気に高めている。ミランの番記者を務めるクリスティアーノ・ルイウ氏は、その要因について「必要な時間が経過していく中で、諸問題が解決されていくと同時に、『最も本田を理解する監督』であるフィリッポ・インザーギの指揮下に入った」ことを挙げる。

 マークが厳しくなった第8節以降は7試合連続無得点。再び正念場を迎えている本田だが、その現状を首脳陣やメディア、サポーターはどう評価しているのか。長年ミランを追う記者が語ってくれた。

トーレス起用がバランスを乱す結果に

「最も本田を理解する」インザーギ監督(左)。この指揮官の就任が追い風になったのは間違いない 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

――本田は、昨シーズンと何が変わったのだろうか?

「ウイングではない選手にウイングをやれ」、「そのウイングとして敵陣深くまでえぐり、クロスを“右足”で上げろ』と本田に求める方がどうかしている。だがそれを(前監督のクラレンス・)セードルフは強いていた。その一方でロシアリーグの中断から休まずにセリエAへ来た彼は、サッカーそのものの質が大きく異なるイタリアで、言葉も分からないまま、度重なる監督交代の中で、すぐに結果を出すことなど不可能だった。もちろん、それでもミランの10番である以上は常に厳しい目にさらされるのは当然だが、やはり、昨季の彼には相応の時間が必要だった。何より重要なのは、本田がイタリア入りした当時のミランが、「ここ30年で最悪」と言われる状態にあったことだ。それほどまでに今年1月以降のミラン内部は、クラブ首脳(バルバラ・ベルルスコーニとアドリアーノ・ガッリアーニ)の対立もあり、混乱を極めていた。

 だが、その難しい昨季を経て、必要な時間が経過していく中で、諸問題が解決されていくと同時に、彼はようやく「最も本田を理解する監督」であるフィリッポ・インザーギの指揮下に入った。ならば状況は劇的なまでに変化する。結果もまた自ずとついてくるようになる。しかも、彼のポジションに最も関係する前線の中央にいるのは動かないマリオ・バロテッリではなく、動くジェレミー・メネスだ。のみならず、逆のサイドでは本来のキレを取り戻した(ステファン・)エル・シャーラウィが敵のDFたちを引きつけることで、本田のプレーエリアは昨季の比ではないまでに広がっている。2列目(中盤)と3列目(右サイドバック)のサポートも、言うまでもなく、あのセードルフ指揮下の4−2−3−1とはまるで違う。来年1月の移籍市場を経て、あるいはポジション争いが厳しくなることも低くはない確率で予想されるが、そうした戦いに勝っていくことでさらに彼は真価を発揮してみせるだろう。

――第8節のフィオレンティーナ戦以降、ゴールを奪えていないが、最大の課題は何だと思うか?

 まさにその第8節のハーフタイムにひとつの理由がある。あの15分の間に、オーナー(シルビオ・ベルルスコーニ)がロッカールームに降りてきて『(フェルナンド・)トーレスを使え』と命じている。そのトーレスの起用は後半35分あたりからだったとはいえ、これが結果としてチームのバランスを著しく乱すことになってしまった。ピッポ(インザーギの愛称)の4−3−3はトーレスのようなFWを想定していないからだ。もちろん他にもさまざまな要因があるとはいえ、やはりこのトーレス起用による狂いが、本田のプレーにも少なからず影響していると見るべきだろう。

現状では右サイドしかポジションはない

――本田が担うポジションは、現在の4−3−3における右サイドが適正だと思うか?

 もちろん、現状のミランでは今の場所が最も適していると思う。むしろ、この今の形の中では右サイドの他に彼のポジションはない。

――サポーターたちは、とりわけスタジアム南側のスタンドに集う“熱いティフォージ”たちは今日の本田をどう見ているのだろうか?

 点を取ればもちろん、仮に取れなくとも質の高いプレーを見せている限り彼らはその選手を支持する。ただ、昨今のミランには超一流がいないという現実がある以上、いわゆる“美技”に酔えないティフォージたちは、ここミラノで“至宝”とされるエル・シャーラウィは別として、今まで以上に“闘う選手たち”へ熱い声援を送る傾向にある。したがって現状でより多くの支持を得ているのはアンドレア・ポーリ、ジャコモ・ボナヴェントゥーラやマティア・デ・シーリョといった選手たち。長くミランのために戦ってきたGKクリスティアン・アッビアーティやDFダニエレ・ボネーラもそう。いずれせよ、ティフォージたちは今日のミランが置かれた状況を知り抜いている。言わずもがなだが、要するに「過度な期待はできない」と。

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著者プロフィール

1969年熊本県生まれ。98年よりフィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。2004年の引退までロベルト・バッジョ出場全試合を取材し、現在、新たな“至宝”を探す旅を継続中。『Number』『Sportiva』『週刊サッカーマガジン』などに執筆。近著に『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜』(コスミック出版)

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