“戦力外後の野球人生”に道筋を ジレンマに苦しむキャリアサポートの実態

篠崎有理枝

将来に不安を感じているプロ野球選手

18人の今オフ戦力外を通告された選手などが受講した合同トライアウトの2回目(20日、ジャイアンツ球場)。一体何人が再びユニホームを着られるのだろうか 【ベースボール・タイムズ】

 2014年も20日までに全2回のプロ野球12球団合同トライアウトが終わった。今季戦力外になった選手は100人以上にのぼり、延べ77人の選手が参加した。その中でも、声がかかるのは毎年わずか数人。声がかからなかった選手は、次の仕事を探すことになる。

 プロ野球選手の引退年齢は平均29歳と言われる。これまで野球に打ち込んできた選手たちは、戦力外を通告された後、自分が何をしたらいいのか分からないという人がほとんどだという。実際、NPB(日本野球機構)が毎年行うアンケート調査によると、選手の70%が「将来に不安を抱いている」と答えていて、そのうちの約90%が「収入面、もしくは進路に不安を感じている」と回答している。この数字はNPBがアンケート調査を始めてから毎年ほとんど変わっていない。

浸透しないキャリアサポート

 こうした問題に対応するため、07年にNPBはセカンドキャリアサポートを立ち上げた。開設当初からキャリアサポートを担当している手塚康二氏は選手会と協力してシーズンオフに各球団をまわり、キャンプにも足を運ぶなどして話し合いを続けている。

「球団にいる時から、野球を辞めた後、どうするかを考えておくことが大切です。いつも選手にアドバイスしていることは、『大きな文字だけでいいからスポーツ紙だけでなく一般紙を読むこと』。そして『貯金をしておくこと』です。引退後にお金があれば、仕事を探す余裕も出てきますから」

 手塚氏はそう話す。
 しかし、野球に集中してもらいたいと考える球団とは協力し合うことが難しいという課題もある。当然のことだが選手も野球で結果を出すことを第一に考えているため、なかなか話に耳を傾けてもらえない。そもそも、NPBにセカンドキャリアを担当する部署があることすら知らない選手が多いという。

「キャンプなどで話をしても、選手が相談に来づらい環境があります。周りも『あいつ、もう次を考えているぞ』とネガティブなイメージを抱きますからね」(手塚氏)

 戦力外になった選手の6割が球団の用具係やバッティングピッチャー、アカデミーなどの仕事でNPBに残る。そのほかの選手も、独立リーグや海外でのプレー、親族の会社に就職するなどして一般企業に就職する人は少ない。「礼儀正しい野球選手を欲しいという一般企業はたくさんあるものの、話があっても人を紹介できないという状況です。球団の用具係やアカデミーの仕事は1年ごとの契約更新なので、いずれ契約を切られる時が来ます。一般企業などNPB以外のいろいろな場で、表に向かって『プロ野球選手はすごいんだぞ』ということをアピールしてほしいです」(手塚氏)

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著者プロフィール

東京都狛江市出身。川村学園女子大学卒業。学生時代からプロスポーツチームで刊行物の編集に携わる。 卒業後は、スポーツ新聞社、雑誌社に勤務。現在はフリーで執筆活動を行う。

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