“戦力外後の野球人生”に道筋を ジレンマに苦しむキャリアサポートの実態

篠崎有理枝

セカンドキャリア問題の解決のために

川口氏が代表を務めるNPO法人ASSでは、プロ野球選手の“第2の人生”をサポートしている。写真は11月に行った就職セミナーの様子 【写真提供:NPO法人ASS】

 選手も不安に感じている再就職だが、求人はあるものの、人材が不足しているというのは意外な点だ。しかし、せっかく一般企業に就職をしても、ほとんどの人が辞めてしまうという現状がある。

「自分が何をやりたいのか分からないまま、紹介された会社にただ行くだけだからこうした結果になってしまうのだと思います」

 そう話すのは、巨人から10年のドラフト会議で育成指名を受けたものの、1シーズンで戦力外通告を受けた後、現役引退後の選手の就職や起業を支援する目的でNPO法人ASS(アスリートセカンドキャリアサポート)を立ち上げた川口寛人氏だ。
 川口氏は「自分も戦力外になった後、どこに相談をしたらいいか分からなかった。何かできないかという思いから活動を始めました」と話し、自らの体験を踏まえ選手の再就職を手厚くサポートしている。

 今年11月には人材紹介業者のDYMと協力し、就職セミナーを開催。元選手20人が参加し、企業への質問や交流が行われた。やりがいを持って仕事を続けられそうな企業に参加してもらい、元選手にもセミナーへの参加を積極的に呼びかけて実現した。このセミナーをきっかけに、すでに数名の採用が決まっている。川口氏は、就職が決まり実際に企業で働き始めた後も相談に乗るなどして、長く勤められるようにアドバイスを続けている。

 学生野球憲章の改定により、近年は高校、大学の指導者への道も開けてきた。しかし、日本で最もメジャーなスポーツであるプロ野球選手のほとんどが、将来に不安を感じながらプレーしているという現状に変わりはない。このような状況で、子どもたちが夢を持ってプロ野球選手を目指すことができるだろうか。
「将来に不安を感じている選手が多くいるのにも関わらず、サポート体制が全くと言っていいほど整っていないと思います。球団は危機感を持ってこの問題に取り組んでほしいと思います」(川口氏)
 引退後の心配をせずに野球に打ち込める環境をつくることが、良い成績につながり、球団にとってもプラスになるのではないか。日本野球界の発展のためにも、各球団が力を入れて取り組んでほしい問題だ。

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著者プロフィール

東京都狛江市出身。川村学園女子大学卒業。学生時代からプロスポーツチームで刊行物の編集に携わる。 卒業後は、スポーツ新聞社、雑誌社に勤務。現在はフリーで執筆活動を行う。

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