本田圭佑に訪れている新たな正念場 3試合連続ノーゴール、薄れてきた存在感
「本田はどこへ行った?」
「本田はどこへ行った? 5試合ぐらい存在感が現れていたが、なんだか最近は姿を消しているなあ」。試合後のミックスゾーンで、地元記者の一人が冗談交じりにこう言う。もっともこれだけ急激に点を取り始めた選手を、他チームだって警戒しないわけがない。フィオレンティーナ、カリアリ、そして2日の第10節で対戦したパレルモ。彼らは目下リーグ1の得点力を誇っているミラン(編注:第9節終了時点まで)と、そのトップスコアラーとなっていた本田について対策を施し、彼らを自由にプレーさせないサッカーをしてきたのだ。
まずは10月26日に対戦したフィオレンティーナ。「(フィリッポ)・インザーギは天才的な発想で本田を使いこなしている。彼はちょっと厄介な存在になっている」。試合前にそう語ったビンチェンツォ・モンテッラ監督は、左サイドバック(SB)のマルコス・アロンソに密着マークをさせて動きを封じた。右SBイニャツィオ・アバーテとの連係もボルハ・バレロのプレスで阻害し、本田が彼にボールを預けてポジションを移すための前提条件をつぶした。
攻撃的サッカーを信条とするズデネク・ゼーマン監督が率いるカリアリとの試合(10月29日)では、特にマンマークが用意されるようなことはなかった。だがその代わり、守備では本田の動くスペースが緊密なゾーンディフェンスで消された。さらには左SBのダニロ・アベラールを積極的に攻めさせ、本田を自陣に押し込み守備に忙殺させることで、彼をゴールから遠ざけた。
チャンスに絡んだのはプレースキックのみ
「ミランは現在、リーグでもっとも点を取っているチーム。彼らの戦術的なストロングポイントはポゼッションと同時に、サイドのFWが中へと絞ってSBをオーバーラップさせ、サイドで数的優位を築いてくることにある。そんな彼らに、足元でパスを回させてはいけない。我々はそのための戦術的なプランを立て、練習を積んできたのだ」
具体的にはこういうことだ。まずFW2人とインサイドMFは、ナイジェル・デ・ヨングとセンターバック(CB)2名に対し、しっかりとフォアプレスをかける。ミランのパスワークの出発点となるのは彼らであり、ここにプレッシャーをかけることでパスワークは阻害。本田をはじめとしたFW陣は、満足な形でボールを受けることができなくなるのだ。
当然、パスの受け手となるFWにも、常に人を付けて自由を奪う。右ウイングを務める本田に対しては、まず彼がライン際に張った時には左ウイングバックのアシュラフ・ラザールをはり付ける。一方で中に絞ってポジションを取った時には、3バックの左を務めるシニサ・アンデルコビッチにマークをスイッチ。ボールを持っていない時もその動きから目を離さず、絶対にフリーでボールを受けさせないようにする。そしてひとたびボールが渡れば、他のMF陣も協力して寄せ、必ず複数で挟み込む。
こうして本田は、序盤からプレーの自由を奪われた。エリア内にもサイドにもスペースはなく、パスの出しどころに困ればバックパスに逃げざるを得なくなる。動いたところでマークも振り切れないから、味方もパスが出せない。そうなれば、プレースキックからチャンスに絡むほかはない。16分、ジェレミ・メネスが倒されて左サイドでFKを得る。これを本田は、左足で鋭いボールを放ち、ニアのフェルナンド・トーレスの頭に合わせた。しかし彼の強烈なヘッドは、ゴール右下隅をわずかにかすめた。