本田圭佑に訪れている新たな正念場 3試合連続ノーゴール、薄れてきた存在感

神尾光臣

サパタのミスで2失点、ただ元をたどれば……

アンデルコビッチ(白)のチェックを受ける本田。マークも厳しくなり、新たな正念場を迎えている 【Getty Images】

 そうこうしているうちにミランは、大変な劣勢に立たされた。23分、アレックスの試合早々の故障で急きょピッチに入ったCBクリスティアン・サパタが相手のCKをなんとそのままゴールへたたき込むミスを犯してしまう。頭が真っ白になったであろうサパタはその3分後、今度はパレルモのFWパウル・ディバラを1対1でまんまと逃してしまい、強烈なシュートを決められる要因を作ってしまった。

 ただ元をたどれば、その両方ともチームそのものが劣勢に立たされていたために生まれたものだ。パレルモの厳しい組織守備の前に攻めあぐんだ末、ボールを失ってカウンターを食らう。そしてチャンスを作れずに攻めあぐんでいたのは、もちろん本田も同様だった。ときどき密集の間に難しいパスを通すシーンはあったものの、シュートを放つことはおろかエリア内に入っていくことも皆無。前半アディショナルタイムにはエリア手前で直接FKのチャンスを得るが、キックは壁に当たった。

 ジリ貧の状況に立たされたインザーギ監督はハーフタイムで、インサイドMFを一枚削って温存していたステファン・エル・シャーラウィを投入。FWを4枚にするという超攻撃的布陣に全体を修正し、本田を右サイドに張らせて相手の守備網を広げにかかった。

 ただ、本田自身は相変わらず波に乗れなかった。右サイドに開いた位置からラザールやアンデルコビッチに対してドリブルで仕掛け、時には右足も使ってクロスを出すが、中央に張る味方には通らなかった。

 彼自身は勝負を捨てず、劣勢の中で懸命に走る。65分、右サイドのスペースに出たルーズボールに反応して走り込み、ラザールと体をぶつけて競り合いながらキープに成功し、左足でクロス。これはメネスに通るが、味方はボールを失った。

今後はスタメンの見直しも

 交代を告げられたのはその3分後。スペースが消され、厳しいマークの中で本田は持ち味を発揮できずに試合を終える。ちょっと昨季のミラン移籍直後に逆戻りした印象だった。

「前半には2度のチャンスがあった。特にトーレスのヘディングシュートがあと少し内側のコースに入っていたら、全く違う試合展開になっていただろう。ただ失点後の反撃は、正直言って良くなかった」。試合後、インザーギ監督はそう反省の弁を述べた。

 この文脈でいえば、本田を含めてチャンスを作りきれなかったFW陣はやはり良くなかったという評価になる。さらに監督は「これまでコンディションが整わなかった選手たちをいろいろと替えつつ使ってきたが、今後あらためて誰に疲労が蓄積しているのかを見極める必要がある」と、スタメンの見直しにも言及していた。

 故障明けのエル・シャーラウィやトーレスのコンディションが上がらず、またメネスも好不調の波が激しい中、コンスタントに活躍できるFWとしてインザーギから厚い信頼を寄せられていたのが本田だ。「だがその分、彼に疲れが蓄積してしまったのではないか」と見る地元記者も複数いた。序盤戦の爆発から、状況は一転。「たかが1、2試合で選手の評価が変わってしまうのは良くない」とインザーギ監督は擁護するが、本田にとっても新たな正念場が訪れていることは間違いないようだ。

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著者プロフィール

1973年9月28日、福岡県生まれ。東京外国語大学外国語イタリア語学科卒。97年の留学中にイタリアサッカーの熱狂に巻き込まれ、その後ミラノで就職先を見つけるも頭の中は常にカルチョという生活を送り、2003年から本格的に取材活動を開始。現在はミラノ近郊のサロンノを拠点とし、セリエA、欧州サッカーをウオッチする。『Footballista』『超ワールドサッカー』『週刊サッカーダイジェスト』等に執筆・寄稿。まれに地元メディアからも仕事を請負い、08年5月にはカターニア地元紙『ラ・シチリア』の依頼でU−23日本代表のトゥーロン合宿を取材した。

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