クラシコで描かれた2強の対照的な姿 最先端のレアルが原点回帰のバルサに勝利

北川紳也(フットメディア)

レアルにとってただの勝ち点3ではない

宿敵に勝利し、歓喜の輪を作るレアル・マドリーの選手たち。すべての面でバルセロナを上回ってみせた 【Getty Images】

 現地時間10月25日、サンティアゴ・ベルナベウで行われたリーグ通算169回目のクラシコは、レアル・マドリーがバルセロナに3−1の逆転勝利を収めた。

 レアル・マドリーは、開始4分でネイマールに先制点を許したものの、35分にジェラール・ピケのハンドで得たPKをクリスティアーノ・ロナウドがゴール右隅に決めて同点。そして、後半開始早々にCKからペペがヘディングで逆転ゴールを決めると、61分に得意のロングカウンターから最後はカリム・ベンゼマがゴールを奪ってバルセロナを突き放し、勝負は決した。

 リーグ開幕8試合で30得点と爆発的な攻撃力を誇るレアル・マドリーと、国内では開幕からゴールを許していないバルセロナの対戦は、戦前から勝敗予想が困難を極めた。英国大手ブックメーカー『ウィリアム・ヒル』も、レアル・マドリーの勝利に2.37倍をつけたのに対し、バルセロナにも2.70倍をつけて、“ホーム・アドバンテージ”以外に優劣の差がつく要素が見当たらないという見方を示したほど。それだけに、開始から1時間で決着がついたのは意外だったと言わざるを得ない。

 もっとも、レアル・マドリーはこの試合で、単に勝ち点3を奪っただけではなく、改めて進むべき道が正しいものであることを証明した。レアル・マドリー寄りスポーツ紙『アス』のフアンマ・トゥルエバ記者は、「レアル・マドリーは、バルセロナにコンプレックスを抱かせる」という見出しを打ったマッチレポートのなかで、こう記事をつづっている。

「この勝利はただの勝ち点3ではない。フィジカル、フットボール観、そしてクラブの哲学。すべての面において相手を上回っていることを証明した。レアル・マドリーのフットボールは、時代の最先端を行くものだ。個のタレントをチーム力に消化するという非常に難しいタスクを、(カルロ・)アンチェロッティ監督はこなしてみせた」

スーパースターが見せた“真面目な姿”

 レアル・マドリーは今季、チャンピオンズリーグ(CL)10度目の制覇を成し遂げたチームに、あえてメスを入れた。それがアンヘル・ディ・マリアとシャビ・アロンソの放出であり、ハメス・ロドリゲスとトニ・クロースの獲得だった。その補強方針は「マーケティング主導」とやゆされ、C・ロナウドでさえ、「自分ならそんなやり方はしない」と不満をこぼしたほど。そして、一部の識者からは「銀河系軍団の衰退期に似ている」と厳しい意見が飛んだ。

 しかし、この日ピッチ上で見られたのは、世界中のフットボール雑誌で表紙を飾るスーパースターたちが、チームのために最後まで走りきる“真面目”な姿だった。開始早々に簡単に失点を喫したものの、動じることなく、「自分たちのフットボールを存分に見せつけて」(『エル・パイース』)勝利。アンチェロッティも試合後、「努力が何より強調されるべき」と、選手たちのプロフェッショナルな姿勢をたたえた。

『アス』の編集長、アルフレッド・レラーニョも、「今日の勝利で特筆すべきは、これまでのようにC・ロナウドで勝ったのではなく、チームで奪った勝利だった」とし、「この勝ち点3は、クラブの改革を後押しするものだ」と記事をつづっている。

 先のワールドカップ・ブラジル大会では、「1人のスターが輝く大会」にピリオドが打たれたことが明確になったが、レアル・マドリーはそのトレンドに則ったチーム作りを行っていることが、この試合で示されたと言えるだろう。

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著者プロフィール

1984年生まれ、徳島県生まれ。マニュアル制作会社に勤めた後、2011年夏からフットメディアに所属。J SPORTSのプレミアリーグ中継や『Daily Soccer News Foot!』などに関わり、ライター・翻訳をメインに活動する。学生時代にはバルセロナへ1年間留学。ルームメイトがアルゼンチン人だったこともあり、南米コミュニティーのなかでフットボールのイロハを学べたことが今の財産。

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