ラグビー日本代表・大野均の「自尊心」 歴代最多出場者が見つめるもの

向風見也

W杯で100キャップ到達の可能性

日本代表として歴代最多の85キャップを誇る大野均 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 きっと、この国の大半のラグビーファンに愛されている。

 古代ローマ風の顔立ちと長髪と整った顎ひげ。192センチ、106キロの体格。「無名大学でのキャリア開始から日本代表入り」という経歴。この人を知る人なら何度でも紹介したくなる端的な特徴を持ち、ふと、恥じらいの笑みを浮かべる。

「少し、話が大きくなっているところもあります」

 酒仙でもある。ある夜、飲食店勤務の知人と酒を酌み交わした。2軒目以降は別れた。翌日の夕方ごろ、1軒目をともにした知人に電話で「店、空いてますか」。それまでの間、ずっと1人でレモンサワーをおかわりしていたらしい。

「その日は、オフだったので」

 テストマッチ(国際試合)への出場数となるキャップ取得の国内最多記録は85に伸ばした。エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)からは「2015年のワールドカップで100キャップを」と称賛される。

 周りを引きつける趣、面白み、すごみを、この人は知らずのうちに体得している。 

「不器用だから人より多く走ろう」

激しいプレーで外国人選手に対抗する 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 大野均。幼少期は福島県郡山市の農家でわら運びや牛乳配達を手伝ってきた36歳は、11月、すっかり定着したジャパンの国内外ツアーに挑む。ニュージーランド先住民族を主体とするマオリ・オールブラックスと1、8日に連戦。中旬以降は欧州でルーマニア代表、グルジア代表とテストマッチを行う。

 半ば強引に勧誘されて入った地元の日大工学部ラグビー部では「先輩が引退して空いたポジション」を任され、いまは接点でぶつかり合うロックを務める。「泥臭いプレー」を心がける。

「意味のある準備をしてくれて、チームの求めるプレーを高いクオリティで表現してくれる選手ですよね」

 大野が所属する東芝の冨岡鉄平HCの言葉は、このクラブで大野を預かった全ての指揮官が口をそろえて言っている。

 しゃにむに駆け回るプレースタイル、ボスへの従順さから、「献身的」、「素直」とのみ評されがちだ。ただ大野は、単にひたむきで従順だというだけで、04年から約10年間も代表の座を守ってきたわけではない。

「どちらかと言えば不器用ですね。だから人より多く走ろう、フィットネスをやろう、と思えましたし」

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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