ユン監督の電撃解任の真相に迫る サガン鳥栖が目指す方向性と“プロセス”

サカクラゲン

首位チームの監督が突然の契約解除

契約を解除された鳥栖のユン監督。首位を走るチームの突然の指揮官交代はなぜ行われたのか 【写真:アフロ】

 突然の監督交代の影響があったのか……。

 首位を走るサガン鳥栖のユン・ジョンファン監督が8月7日付で契約を解除された。

 台風の影響で2日順延となった第19節サンフレッチェ広島戦(0−1で敗戦)で指揮を執ったのは吉田恵。中3日しかない中での初陣は、初めて監督に昇格した指揮官には相当なプレッシャーだったに違いない。

「(監督としての)力不足を実感した試合でした」とのコメントには悲壮感さえ漂う。首位に並んでいた浦和レッズも敗れたので、辛うじて首位タイの座は守ってはいるが、上位争いが混とんとしたのは間違いない。

 なぜ、この大事な時期に鳥栖は監督を交代させる必要があったのか。契約解除の発表直後から、さまざまな憶測が各媒体を飛び交った。ユン前監督とクラブの不仲説や、母国である韓国代表チームのスタッフ入りを打診されたなど、当該者たちの思惑以外のところでにぎわっている。契約解除発表から一週間ほど経つが、いまだにその真意を測りきれてはいない。ユン氏、そして竹原稔代表取締役の口から直接語られるまでは、真相に近づいても真意が表に出ることはないだろう。

 とはいえ、ユンは現監督ではない。8日の会見では、永井隆幸強化部長の口から「目指す方向は同じでも、そこに至るまでのプロセスに違いがあった」との説明があった。

 契約解除の理由としては、『プロセスの違い』と明言されたものの、この時期での契約解除の説明はなされなかった。ただ一言「結論は早い方がいい」とのことだった。この言葉で一層の混乱を招いたのは間違いない。契約解除をクラブから通告したのか、ユン本人が申し入れたのかは明かされなかった。「お互いの合意の上での結論」と永井強化部長は繰り返したが、その実、「ケンカ別れでは?」と指摘する媒体もあるほどだ。ケンカ別れなどという物騒なものではないにしろ、お互いの思惑にズレがあったことは事実。そのあたりを検証(考察?)したい。

“タイトルの先にあるクラブ”へのプロセスのズレ

「何かしらのタイトルを取る」とユン前監督が宣言して始まった鳥栖の2014年シーズン。悲願のタイトル奪取に向かって、今のところは順調に走っている。

 ただ、クラブとしては『タイトルを取る』だけではいけないと感じていた。

 昨季は、シドニーFC(オーストラリア)を招いて親善試合を行った。今季もユベントスU−16を招待して、トップチームだけではなく下部組織の育成にも力を入れているのが分かる。“タイトルの先にあるクラブ”を見据えての行動であることは間違いない。そのためには、何としてもタイトルは取らないといけない事情があるわけだ。

 今回の解任騒動は、そこに至るまでのプロセスに違いがあったと推測した方が分かりやすい。そこを解くキーワードは、「選手へのアプローチ、身体関係、勝利での評価などクラブとの相違がみられた」である。

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著者プロフィール

サッカーライター・サッカー解説者。中学1年生よりサッカーを始める。福岡市社会人リーグでは、主にFWとして活躍。その後、社会人リーグのチーム監督を務め、2001年に福岡市長杯3位の成績を収める。日本サッカー協会公認コーチ資格、審判資格も取得し選手育成に力を注ぐ。これまでに福岡県協会女子連盟トレセンU-12、U-15を指導。2004年には福岡県U-18女子代表コーチに就任。2010年には福岡Jアンクラス(Lリーグ)のサテライトチーム監督に就任。2011年からは、福岡県社会人サッカーリーグ選抜監督に就任し、福岡県社会人リーグの強化に努める。ライターとしてJリーグ公式サイト「J ’sGOAL」や「週刊サッカーダイジェスト」「週刊サッカーマガジン」「EL GOLAZO」など多数の専門誌に寄稿。スカパーでの中継ではサガン鳥栖やアビスパ福岡ホーム戦解説を担当するなど多才に活躍中。

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