香川の現状は“補欠合格通知待ち” 残留か移籍、ファン・ハールの決断は?

寺沢薫

生き残りを懸けた“公開オーディション”

新チームでの生き残りを懸けた“公開オーディション”が行われたマンチェスター・ユナイテッドの米国遠征。香川の現状の評価とは? 【写真:Action Images/アフロ】

 ルイス・ファン・ハール新体制のマンチェスター・ユナイテッドが上々の滑り出しを見せている。ワールドカップ(W杯)終了からわずか2日後、前オランダ代表監督はオフを返上し、新天地での仕事をスタートさせた。最初の記者会見で、新指揮官はこう話した。

「他の選手を買う前に、いま在籍する選手たちに何ができるかを見たい」

 新チームでの生き残りを懸けた“公開オーディション”が、その幕を開けた瞬間である。

 オーディション会場は米国。日本時間7月24日、プレシーズンの初陣でLAギャラクシーを7−0と一蹴してウォームアップを終えたユナイテッドは、そのままギネス・インターナショナルチャンピオンズカップ(以下ICC)に挑んだ。結果から言うと、チームはローマ(3−2)、インテル(0−0、PK勝ち)、レアル・マドリー(3−1)、リバプール(3−1)と強豪相手に全勝し、優勝を果たした。

 ファン・ハールは、その全試合でオランダ代表と同じ3−4−1−2のシステムで戦った。オーディションを受けた選手たちは、指揮官の哲学を体現しようと必死にプレーし、結果を出した。その過程を追っていた英国メディアのファン・ハール評も好意的なものばかり。たとえば『テレグラフ』は、「ファン・ハールこそユナイテッドのベスト補強」とまで断言した。

香川は「6番や8番」でも試される

米国遠征中、香川を6番や8番で試したファン・ハール監督(写真) 【写真:Action Images/アフロ】

 米国での5試合で、プレミアリーグ開幕戦のメンバーがある程度見えてきた。『デイリーメール』が予想した「3−4−1−2」は以下。

GK:ダビド・デ・ヘア
3:クリス・スモーリング、フィル・ジョーンズ、ジョニー・エバンス
4:アントニオ・バレンシア、アンデル・エレーラ、ダレン・フレッチャー、アシュリー・ヤング
1:フアン・マタ
2:ウェイン・ルーニー、ダニー・ウェルベック

 ここにW杯休暇で合流が遅れたロビン・ファン・ペルシーが加わる可能性もあるが、ケガ人が出なければ、8月16日の開幕カード・スウォンジー戦のピッチにはこの11人が立つことになるだろう。ここに名を連ねたメンバーは、米国ツアーでファン・ハールのオーディションをパスした選手たちだ。

『ミラー』の記事を見ると、「3バックによく対応した」守備陣や、「ウイングバックとして意外な発見だった」アシュリー・ヤング、近年は病気に苦しんでいたが、復活の兆しを見せてチームを引っ張ったフレッチャーらが大きく評価を上げたことが分かる。

 日本代表MF香川真司はというと、現状はオーディションの“補欠合格通知待ち”といったところだろうか。米国ツアーの初戦からチームに合流した香川は、LAギャラクシー戦とICCの全5試合に出場した。とはいえ、すべて後半開始、もしくは後半途中からの投入で、先発組に食い込むことは一度もなかった。しかも最初の2試合はトップ下ではなく、「6番や8番(ボランチ/セントラルMF)」での起用。これは「10番(トップ下)が多すぎる」と話したファン・ハールが、香川の使い方を考えた結果だろう。この時点で、今後3−4−1−2のウイングバックとして香川がプレーする可能性は限りなく低くなった。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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