メキシコ、6大会連続決勝T1回戦で敗退 殻は破れずも賞賛されるべきエレーラ監督

池田敏明

大会に彩りを添えてくれる国

6大会連続で決勝T進出を果たすも、またも1回戦の壁を破れなかったメキシコ。終盤にオランダの猛攻を受け1−2と逆転負けを喫した 【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)に参加する32カ国の中で、メキシコほど大会に彩りを添えてくれる国は他にないのではないだろうか。ピッチで繰り広げるのはショートパスをテンポよくつなぐ小気味よいサッカー。本国からどれだけ遠く離れていても、数万人規模のサポーターが開催地を訪れ、ソンブレロ(つばの広い帽子)にポンチョといった伝統衣装やルチャ・リブレ(メキシコのプロレス)のマスクというド派手な格好、「メヒコ! メヒコ! ラーラーラー!」などの独特なチャントで会場を盛り上げる。チームはどんなトーナメントでも好勝負を演じて好成績を残し、その間にさまざまな話題を提供してくれる。

 今大会では得点や勝利の際に全身で喜びを表現するミゲル・エレーラ監督の動きがインターネット上で話題になったり、選手が宿泊するホテルにサポーターが大挙して押しかけ、選手や監督も入り混じってお祭り騒ぎをしたりと、何かにつけて注目の的に。相手GKがキックを蹴る際のサポーターの掛け声が性差別になるのではないかとFIFA(国際サッカー連盟)が調査を開始する騒動もあった。この件について説明しておくと、この掛け声はメキシコではおなじみのもので、サポーターたちが性差別を意識しながら発しているわけではない。FIFAもその点は理解しており、全く問題ナシという結論に至っている。

序盤は試合を完全にコントロール

 グループステージでカメルーン(1−0)、クロアチア(3−1)に完勝し、ブラジル相手にスコアレスドローの熱闘を演じるなど、今大会でも完成度の高いサッカーを披露したメキシコは、6大会連続でW杯決勝トーナメントに進出。オランダとのマッチアップを迎えた。両チームとも5−3−2のフォーメーションを採用しており、この日も同じ布陣でスタートしている。メキシコはグループステージで1失点という堅守のチーム、オランダは10得点の攻撃型チームという印象だが、実際はその真逆。前者はボールをキープして攻撃を仕掛けるからこそ失点を回避できているのであり、後者はアリエン・ロッベン、ロビン・ファン・ペルシの破壊力を生かしたカウンターが機能しての10得点である。

 この試合の序盤はその傾向が如実に表れ、メキシコがボールをキープし多彩な攻撃を仕掛けていった。特に効果的だったのは、左ウイングバックに入ったミゲル・ラジュンの突破。2分と5分にカットインからの鋭いミドルシュートを放つと、その後は再三にわたって縦方向に抜け出しクロスを供給するなど、縦横無尽の動きで左サイドを支配していく。2トップを組むオリベ・ペラルタとジオバニ・ドス・サントスのキープから2列目のアンドレス・グアルダードとエクトル・エレーラも果敢に前線に飛び出し、累積警告で出場停止となったホセ・バスケスに代わってアンカーで先発出場したカルロス・サルシードも意表を突くミドルシュートで相手GKを脅かすなど、完全に試合をコントロールする。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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