宮本慎也が説く、真の“自己犠牲”とは? 進塁打を狙う打撃の増加に苦言

ベースボール・タイムズ

宮本慎也氏がここまでのセ・リーグと低迷する古巣・ヤクルトを振り返る 【写真は共同】

 約1カ月に渡った交流戦が終わり、2014年シーズンも折り返しが近づいてきた。各球団が仕切り直しを図る中、昨季限りでユニホームを脱ぎ、野球解説者として新たなスタートを切った宮本慎也氏が、ここまでのセ・リーグの戦い、厳しい戦いが続く古巣・東京ヤクルトの現状、そして強いチームの条件を語ってくれた。

「焦りのない」巨人、広島の躍進で面白いV争い

「勢いだけでは勝ち切れない」と語る宮本氏。春先、首位を走った広島はチームの体力がもたなかった部分があったと指摘。ここからがポイントだと話す 【写真:山崎理美】

――今季も早いもので、シーズンの半分が過ぎようとしています。開幕からここまでのセ・リーグの戦いをどう見ていますか?

 評判の良かった広島が、まずは走りましたよね。僕は開幕前、広島を3位と予想しました。ピッチャー陣に安定感があり、野手もここ2〜3年、我慢して使ってきた選手が、着実に力をつけてきた。ここに、春先は外国人選手の活躍が加わって、好スタートを切りましたよね。交流戦に入り調子を落としましたが、長いシーズンですから、必ずこういう時期は来るでしょう。ここから秋まで、いかに調子の波を少なくできるかがポイントになるでしょうね。

――広島は春先、非常に勢いを感じました。

 昨年、クライマックスシリーズに出て、ファーストステージも勝って、「俺たち、できるんじゃないか」と思ってシーズンを迎えた部分もあったと思いますよ。若いチームですから、勢いがつくと強いですよね。ただ、勢いだけでは勝ち切れないのは見て分かる通りです。ヤクルトも11年に若い選手が中心となって優勝争いをしましたが、後半になるにつれて大事なところで勝てなくなりました。続かなかったんです。優勝争いを経験した選手もほとんどいなかったですし、チームが体力的にもたなかった。広島もそういったところがあるでしょうから、ここからがポイントになるでしょうね。

――優勝の大本命とされた巨人ですが、ここまで独走できずにいます。

 弱点があるとすれば、先発ピッチャーではないかなとは思っていました。他のポジションに比べ、十分に戦力がそろっているわけではありません。それがそのまま出ているようなイメージです。
 打線もあまり打てずにいましたが、あくまで“水物”ですから、それが一番の要因というわけではないでしょうね。投手陣が不調な上に、キャッチャーの阿部(慎之助)自身の打撃の不振も重なりました。攻守に負担もあったんでしょう。

――それでも首位にいるというのはやはり力がある?

 焦りはないでしょうね。いろいろオーダーも変えていますし、原(辰徳)監督も夏までに固定できればいい、というぐらいの形でやっているのではないでしょうか。ここまで思い通りにはいっていないでしょうけど、春先に悪い悪いと言われながら、結局上位にいるわけですから、やはり戦力はあるなと思いますね。広島が春先に走ったおかげで、独走状態にはないですし、優勝争いが面白くなったとは思います。もっともっと盛り上げるためには、下位の3球団がもう少し頑張ってくれないといけませんね。

ヤクルトは「もう少し負けると思っていた」

――“下位の3球団”には、昨季までユニホームを着ていたヤクルト(23日現在5位)も含まれています。いまの現状をどうみていますか?

 いまの戦力で言うと、よく頑張っていると思います。早い段階で館山(昌平)が離脱し、その後も故障者が出てしまっています。正直、僕はもう少し負けてしまうんではないかと思っていました。

――苦しい状況の中、打線の奮起が目立ちます。チーム打率はリーグトップです。一方で、防御率4.87は12球団でも最下位となる数字です。

 そうですね。この時期とは言えど、チーム打率はリーグトップの数字を残すというのは素晴らしいと思います。ただ、数字を残しているのですが、ここぞという場面で点を取れているかといったら、取れていないように思いますね。ここでなんとか1点取れば、勝てるチャンスが出てくるとか、一気に逆転できるという場面で、点を取れない場面も多くありました。ピッチャーが悪いとは言っても、これだけ打てていたら、他チームの状況を見ても、もう少し勝って、順位も上にいなくてはいけないと思いますね。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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