宮本慎也が説く、真の“自己犠牲”とは? 進塁打を狙う打撃の増加に苦言

ベースボール・タイムズ

変わった“自己犠牲”の解釈

最近はヒット狙いでなく、はじめから進塁打を狙って、それでOKという表情をしている選手が多くなっているという。宮本氏は“自己犠牲”の解釈が「変わった」と訴える 【写真:山崎理美】

――勝つためには何が足らないのでしょうか?

 やっぱり、取りたいところでいかに1点を取るかという部分ですよね。これはこれからもっと勉強していかないといけないと思います。

――細かいプレーなどができていないのでしょうか?

 できていないというわけではないんですけど、もっとできるんじゃないかなという感じですね。

 これはヤクルトに限らず言えることなんですけど、最近はいわゆる“自己犠牲”という意味の解釈が変わってきてしまっているかなと感じています。例えば、自分がアウトになってもいいから、“最低限”走者を先に進めるということを考えるのが“自己犠牲”と言われるプレーのひとつです。場面で言うと、ノーアウトランナー二塁。ここでセカンドゴロを打つというのが、最低限のプレー。ただ、あくまで、ここでのセカンドゴロは“最低限”です。チームが「打て」とサインを出したなら、ランナーをかえす作業をすること。最近ははじめからセカンドゴロを打つような形で打っていて、実際に狙い通りになったときに、それでOKという表情をしている選手が多いかなと思います。

――ヒットを狙ったうえでの結果でなければいけない?

 そうでないと、送りバントと一緒ですからね。あくまで一、二塁間、ライト前へのヒットを狙った結果でないと、ただの自己満足になってしまうと思います。優勝を争ったような強いときのチームは、選手がみんな我が強くて、打てる実力もある中で自己犠牲のプレーをしていましたから。自己犠牲をしなきゃいけないじゃなくて、実力がある上で、さらに自己犠牲をしなくては、優勝はできなかったんです。

宮本氏がヤクルトで期待する選手は?

――外から野球を見て、また野球をやりたいと思ったりすることもあるんじゃないですか?

 いや、身体を動かしたいと思うことはあっても、野球をやりたいという感覚はないですね(笑)。
 ただ、いまは外から野球を見せてもらっていますが、本当の勉強は、ユニホームを着て、ベンチに入るなどしないとできないなというのは感じています。こうやったらいいとか、第3者的に見ることはできますけど、勝負の中での判断だったりという部分は、勝つか負けるかが隣り合わせにないと感じ取ることはできないかなと。それでもいまは、外から見せてもらって、グラウンドでは見えなかった部分を見せてもらっているので、自分の考え方の引き出しを増やす作業をさせてもらっている感じです。

――ヤクルトで期待している選手はいますか?

 センターラインはしっかりしなくてはいけないなと思いますね。もちろんピッチャーもですけど、ここがしっかりしてこないと、本当の強さというのはついてこない思います。そういう意味では、今年良い成績を残している中村(悠平)、山田(哲人)あたりが、長く、中心で活躍できる選手になってほしい。こいつがいるから大丈夫と、周りに思われるような存在になってほしいなとは思っています。

――再びユニホームを着る姿を待っているファンも多いと思います。

 まぁこればかりは縁があってのことですからね。ただ、いつ呼ばれてもいいように、勉強しておきたいと思っています。

(取材・文:谷口一馬/ベースボール・タイムズ)

宮本慎也(みやもと しんや)

1970年11月5日生まれ(43歳)。右投げ右打ち、内野手。PL学園高→同志社大→プリンスホテル→東京ヤクルトスワローズ(94年ドラフト2位〜2013年)。
東京ヤクルトスワローズで、巧みなバットコントロールと勝負強さ、そして球界屈指の守備力の高さで長らくレギュラーとして活躍。04年のアテネ五輪、08年の北京五輪では日本代表のキャプテンにも選ばれ、日の丸を背負いプレーした。12年には通算2000安打を達成し、同年には史上3人目となる通算400犠打も達成。13年シーズンは選手兼任コーチとなり、同年限りで引退。現在は現場を離れ、野球解説者など活動の場を広げている。

【ベースボール・タイムズ】

【著書情報】

『意識力』
宮本慎也著(PHP研究所)

内容:意識ひとつで結果は変わる――。誰でもできることを本気で取り組むことの重要性など、宮本さんが19年間のプロ生活を通じて培ったものが詰まった1冊です。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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