ホンジュラスの忘れてはいけない負の歴史 ナショナリズムを反映したサッカーと戦争
世界史にも残った大事件!
W杯の常連になりつつあるホンジュラス。しかし、過去にはサッカーが引き金となり、戦争となった負の歴史がある 【写真:ロイター/アフロ】
その中でも、最も大きな事件――サッカー史のみならず、世界史に残ってしまうような大事件――に発展したのが、1969年7月に発生したホンジュラスとエルサルバドルの間の戦争、通称“サッカー戦争”だ。
ネーミングだけを見て勘違いしていただきたくないのだが、ホンジュラスとエルサルバドルはサッカーの試合だけをきっかけとし、突発的に戦争を始めたわけではない。両国は国境を接しており、元々、さまざまな問題を抱えていた。それらが試合で爆発する形となったのだ。
一触即発の両国がW杯予選で激突
そんな中で行われたのが、70年のW杯メキシコ大会の北中米カリブ地区予選準決勝、ホンジュラス対エルサルバドル戦だ。サッカー人気の高さも影響して、両国の国民はこの試合にナショナリズムを投影させた。試合はホーム&アウェーで行われたのだが、アウェーチームの宿泊するホテルをホーム側のファンが取り囲み、夜を徹して罵声を浴びせたり、投石したりと、あらゆる嫌がらせを行った。
2002年W杯日韓大会、続く06年W杯ドイツ大会予選の大陸間プレーオフで、ウルグアイのサポーターがオーストラリア代表に同様の仕打ちをしていることからも分かるとおり、この行為自体は中南米諸国ではそれほど珍しくはない。しかし、この時は「母国の代表を勝たせたい一心」よりも「相手国憎し」の感情が強かった。サポーター同士の乱闘事件も各地で発生し、エルサルバドルで試合が行われた際には、ホンジュラス人サポーター2名が暴行の被害を受けて亡くなっている。