「死の組」のカギを握るコスタリカ グループ突破への希望は「負けないこと」

池田敏明

“死のグループ”に振り分けられた悲劇の国

北中米予選を2位で突破したコスタリカ。しかしW杯本大会では“死のグループ”に組み込まれた 【写真:ロイター/アフロ】

 AからHまで8つあるグループの中で、最も厳しい組み合わせと見られているのがグループDだ。何しろワールドカップ(W杯)の歴史において8カ国しかない優勝国のうち、イタリア、イングランド、ウルグアイの3カ国が同居しているのだ。大会の名物であり、大きな注目を集める“死のグループ”であることは間違いない。

 2014年6月のFIFAランキングでは、ウルグアイ7位、イタリア9位、イングランド10位といずれもトップ10入りし、現在も高いレベルを維持している。イタリアはセリエA、イングランドはプレミアリーグと、国内リーグは世界最高クラスのレベルを誇り、ウルグアイからは多くの選手がそれらのリーグに参戦し、主力として活躍している。三者の直接対決はハイレベルな攻防が期待できるとともに、どのような結果になるか、そしてどこが勝ち上がるのか、まったく予想がつかない。

 そこで重要になってくるのが、この“死のグループ”に振り分けられてしまった悲劇の国、コスタリカとの試合だ。FIFAランクは28位と日本よりも上位に位置し、北中米カリブ海予選を米国に次ぐ2位で突破したとはいえ、他の3カ国との実力差は、はっきり言って歴然としている。イタリア、イングランド、ウルグアイにとっては、コスタリカ戦でしっかりと勝ち点3を確保し、できれば大量得点も奪っておきたいところだろう。では、対するコスタリカは、どのように強豪と対峙すればいいのか。彼らに決勝トーナメント進出の可能性は、あるのだろうか。

日本戦では理想の展開で先制点を奪う

 コスタリカは6月2日(現地時間、以下同)に日本代表とテストマッチを行った。ホルヘ・ルイス・ピント監督いわく、この試合は「イタリア戦に向けたシミュレーション」だったという。確かに日本の監督はイタリア人のアルベルト・ザッケローニだが、だからといって「イタリアと同じスタイルを持っているはず」と断言するのは短絡的すぎだろう。それでも、コスタリカはこの試合でフルメンバーが先発し、イタリアに対してどのように戦うべきか、その方法を模索していた。

 また、6月6日には「仮想ウルグアイ、イングランド」として、この両国と同じようにフィジカルの強さを持ち味とするアイルランドと対戦。日本戦からメンバーを入れ替えつつ、堅守速攻型のチームにどう立ち向かうかのテストも行った。

 まずは日本戦から分析していこう。5−2−3という変則的な布陣で守備への比重を高くし、攻撃はカウンター主体というのがコスタリカの戦い方だが、日本戦の前半は相手への素早いプレッシングでボールを奪い、パスをつないで崩そうとする意識も見られた。現実はどうあれ、ピント監督にとってはポゼッションサッカーが一つの理想としてあるようだ。ブライアン・ルイスの先制点はそれが結実したもので、左サイドでのパス交換から一気にスピードを上げてスペースを突き、折り返しを中央で合わせたもの。縦へのスピードが武器となることは証明できた。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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