「死の組」のカギを握るコスタリカ グループ突破への希望は「負けないこと」

池田敏明

後半に集中力が切れる悪癖

後半に入るとペースががくっと落ちてしまうのがウィークポイント。日本戦でも後半は完全にペースを奪われた 【写真:ロイター/アフロ】

 ただ、後半に入ると選手たちの足が止まり、ピント監督が「これだけ攻撃を受け続けたのは初めてだ」とコメントするほど日本の猛攻にさらされ続けた。コスタリカには元々、後半半ば過ぎから集中力が途切れ、ペースがガタリと落ちる悪癖がある。せっかく先制をし、リードを広げたのに、後半に追い付かれ、逆転を許すという試合を何度も演じている。W杯で同じミスを犯すと、間違いなく致命傷になる。イタリア戦はもちろん、ウルグアイ戦、イングランド戦においても、最後まで集中を保って戦い抜けるようなペース配分が必要になる。

 一方、アイルランド戦は相手が引いて守るスタイルだったこともあって日本戦以上にボールを保持し、厚みのある攻撃を仕掛けることができた。しかし17分に先制点を許し、攻撃も決め手を欠いて得点はセルソ・ボルヘスのPKによる1点のみと、やや消化不良に終わった感も否めない。失点の場面は陣形が間延びし、相手へのプレスがかかっていない状態でクロスを上げられ、DF陣がボールウォッチャーになり、フリーでヘディングシュートを許すという最悪の形だった。このシーンのように守備が後手に回りやすいのも、コスタリカの欠点の一つ。特に厚みのある攻撃を仕掛けられた場合、守備陣がパニックに陥り、凡ミスから失点を喫するパターンが多々ある。ウルグアイ、イングランドとも前線にはパワフルな選手を擁しており、コスタリカとしては細心の注意が必要だ。

1990年イタリア大会の再現を望む

 コスタリカのウイークポイントとしてもう一つ挙げるとすれば、選手層の薄さがある。先発メンバーにはヨーロッパで活躍する選手が多く、ジョエル・キャンベルやB・ルイスなど、ワールドクラスの実力を備えた選手もいる。しかし控えの選手にそれほどの力量がないため、交代策で流れを変え、劣勢を跳ね返すという手段が取れない。最終メンバー発表直前にエースのアルバロ・サボリオが右足第五中足骨骨折で離脱を余儀なくされてしまったため、戦力はさらに低下している。相手に先制を許してしまうと逆転は難しくなる。
 テストマッチ2試合の戦いぶり、そしてチームが持つウイークポイントを踏まえると、コスタリカが強豪3カ国と互角の戦いを演じたいと思うなら、とにかく変な色気は出さず、守備的な戦いに従事するのが賢明だろう。とはいえ受け身になりすぎるとアイルランド戦の失点シーンのような事態を招くので、バイタルエリア手前で相手の突破を食い止められるよう、ブロックを形成しなければならない。攻撃はカウンター狙いが現実的だ。B・ルイスやキャンベルのスピードを生かし、手数をかけずにゴールを目指したい。どれだけ攻められても集中力を切らさず耐え続け、少ないチャンスを確実にモノにする。求めるのは「勝つこと」ではなく「負けないこと」。指揮官の理想を捨てることにはなるが、辛抱強く戦い続ければ勝機は見えてくるだろう。

 コスタリカは1990年イタリアW杯で前評判を覆す躍進を見せ、決勝トーナメント進出の快挙を成し遂げたことがある。現チームのアシスタントコーチを務めるかつての名ストライカー、パウロ・セサル・ワンチョペはこう語っている。「世界中がイングランド、イタリア、ウルグアイのいずれかが決勝トーナメントに進出すると考えている。コスタリカが突破すれば、それはビッグサプライズだ。しかし、コスタリカはブラジル、スコットランド、スウェーデンがいる厳しいグループを突破した」。コスタリカの人々は、イタリア大会の再現を望んでいる。

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著者プロフィール

大学院でインカ帝国史を研究していたはずが、「師匠」の敷いたレールに果てしない魅力を感じて業界入り。海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファー、なぜか動物番組のロケ隊と、フィリップ・コクーばりのマルチぶりを発揮する。ジャングル探検と中南米サッカーをこよなく愛する一方、近年は「育成」にも関心を持ち、試行錯誤の日々を続ける

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