目覚めた明治、日本一は「遠くない」 変わりつつあるスター軍団

向風見也

勝木主将「すべての試合に勝つ」

「前へ」の信念を守り、復活を目指す明治大 【写真:アフロスポーツ】

 明大ラグビー部の朝は早い。メインのトレーニングが午前6時15分から始まる。練習場には照明スタンドがない。部員が授業と練習を両立させるには、これがベストなのだという。

 小鳥のさえずりが響く2014年5月22日。東京都世田谷区八幡山の人工芝グラウンドである。この日も三々五々、紺や白のミズノのTシャツを着た学生が集まってきた。15分に集合。始動。以後、ポジションごとの連携確認と走り込みに没頭する。

 25日には関東大学春季大会の第3戦で、昨季全国4強の筑波大と対戦する。タイミングを見て、甲高い声で気合を入れるのは勝木来幸主将だ。大阪工大高(現常翔学園)出身。明るい人柄と情熱が同級生、後輩、首脳陣から信頼されるプロップである。

「すべての試合に勝つ。内容にもこだわるんですけど、チームに自信と勝ちグセを付ける。去年の春は大敗続きで、自信がないまま夏合宿、秋のシーズンを迎えていたので」

春の早稲田大戦は41対26で勝利

 リーダーの思いが反映され、いま、チームは好結果を残している。春季大会は前年度の中位チームによるグループBで2連勝中、17日には佐賀での招待試合で早大を41対26で下した。やや低迷した昨季は春シーズンから黒星がかさんでいたとあって、勝木主将はまず「勝ち」が欲しかった。

「みんなには、自信は持っていいけど過信してはダメだと話しています。去年から挨拶や掃除とか、当たり前のことを当たり前にやろうと言っていた。そういうところが表れてきているかな、と。本当にそうかは分からないですけど」
 快活。朗らか。午前8時前、練習を終えたリーダーが笑った。

才能あふれる選手が並ぶバックスライン

 好調の要因は、バックスラインの鋭い仕掛けだろう。今季から攻撃時の決めごとを減らしたことで、各自が創造性を生かしているようだ。卒業生で、日本代表となった田村優(NEC)の弟、田村熙(3年)が司令塔のスタンドオフとして君臨。周囲では意気揚々とランナーがシンプルな陣形を作り、エリアを問わずランやパスを繰り出す。

 国学院栃木高時代から田村とプレーする2年生のセンター尾又寛汰は、ボールをもらう前から走路を細やかに変えてタックラーの死角をえぐる。両ウイングには幻惑的な走りを繰り出す2年生の成田秀平、連携の肝である3年生の齊藤剛希が並ぶ。現在は調整中の水野拓人副将、報徳学園高3年時に日本代表候補となったルーキー・梶村祐介ら実力あるセンターも順次、復帰予定。定位置争いも激しくなりそうだ。

 攻めの起点を作るフォワード陣でも、勝木主将や4年でロックの大椙慎也副将ら昨季からのレギュラーがそろう。充実の布陣にあって、スタンドオフの田村は言い切るのだった。

「核になるポジションにいい選手がそろってくれている。チームに説得力があるというか、締まっている」

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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