目覚めた明治、日本一は「遠くない」 変わりつつあるスター軍団

向風見也

1996年度以来、大学選手権の優勝なし

昨年は大学選手権セカンドステージで敗退した 【写真は共同】

 明大は日本ラグビー界で最高級の人気を誇る。半永久的に「前へ」をスローガンとし、突進また突進でゴールラインを目指して多くのファンを獲得してきた。こうした歴史と相まって、高校日本代表経験者など多くのスター候補が入学している。4月に、来年のジュニアワールドカップ出場を決めた20歳以下日本代表(26名が参加)へは、全チーム中最多となる5名の選手を輩出した(新1年生を含めると帝京大の7名が最多)。

 しかし、王座からは長らく遠ざかっている。通算12回の大学日本一に輝くも、最後の優勝は1996年度。今年の新入生が1995年生まれとあって、隔世の感がある。一昨季までの4年間は部の伝説的選手だった吉田義人監督が率いるも、全国4強入りが2回という成績で退任。前年度は丹羽政彦監督が就任したが、所属する関東大学対抗戦Aで5位、日本一を争う大学選手権でも3季連続の予選プール敗退に終わった。極論を言えば、いい選手がいるのに勝っていないのである。

「プライドを持ちすぎていた」

 なぜ、そうなのか。

「僕が思うのは、プライドかなと」

 明確な答えを示したのは、3年生のフッカー中村駿太である。先の20歳以下代表でも活躍、桐蔭学園高時代はメンバー同士のミーティングで競技の構造を学んだ知性の人は、過去の現実を踏まえて光を見出していた。

「自分のプライドを持ちすぎていて、コーチや周りの選手たちの言うことに素直になれないというか……。後輩にアドバイスされたら『ん?』となったり。でも今年は、勝つために1年生、2年生ともコミュニケーションが取れるようになった。言いたいことを言えるようになった。変な上下関係もなくなりましたし」

 極度に厳しい上下関係と各種の因習は、丹羽監督や圓生正義前主将(ホンダ)が撤廃した。勝木主将も「今年は全員で勝ちたい。下級生がのびのびできるように」とその意を受け継いでいる。最低限の礼儀と規律は指導しつつ、「僕はフレンドリーな方で、後輩ともご飯に行って悩みを聞く」らしい。メイジなりのウイニングカルチャーが、徐々に、作られつつある。

自分たちの明るい未来を信じる

 現在の大学ラグビー界にあっては、選手権5連覇中の帝京大が立ちはだかる。いくら明大が春に勝ちまくっているからといって、王座奪還は簡単ではあるまい。多くの第三者の、それが見立てだろう。
 
 しかし、勝木主将は胸を張る。「日本一……。遠くはない。全然、獲れると思います」。大げさに表現すれば、自分たちの明るい未来を信じているのだ。

「練習への意識が高くなりました。100パーセントでやると言ったら、皆が100でやる。やってきたことが試合に出ている。この状態を秋に向けて、どれだけピークに持っていけるか、です。そのあたりで、僕の力量も問われると思うんですけど」

 きょうも紫紺のジャージは早くに目覚め、才気を開放させる。学生スポーツでは最上級生の充実ぶりが重要視されるが、今年は明大ラグビー部のどの選手も「4年生がまとまっている」と口にしている。

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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