ユース年代の育成で意識したい2つの視点 “上につながる”選手を“地域で育てる”
不毛な「高校かJユースか」という対立
ユース年代において「高校かJユースか」という対立は希薄になってきていると語る流経柏の本田監督。われわれはどのような視点でユース年代を見るべきなのだろうか 【写真:アフロスポーツ】
流経柏の偉業を筆頭に、ここ1、2年のユース年代はJユースに対する高校サッカーの巻き返しが目立ち、改めて「高校かJユースか」という対立を仰ぎやすい構図ではあるが、個人的にこの対立軸はサッカーにおける「攻撃か守備か」、「ポゼッションかカウンターか」という問いと同様に不毛なものになりつつあると認識している。要するに、ユース年代における高校、Jユースは共に重要で、共に強いチームがあるということ。
3月7日に行われた大会概要のメディア対応において、流経柏の本田裕一郎監督も「高校には(指導者が)一日中選手と接する、生活模様を見ることができる利点があり、クラブには(選手の)費用負担が少ないなどの魅力がある」とした上で、「クラブの良さを高校が盗んだり、クラブの弱い部分を高校からまねることがここ数年顕著。どっちが良い悪いではなく、お互いが環境の違いや垣根を乗り越えていい具合に、いい戦いができている」と話していた。
現場レベルで対立軸や敵対心が希薄になっているどころか、すでに相手の良い部分を吸収して競争力を高めている効果が出始めている以上、われわれが日本のユース年代を見る時には育成という広い視点での新たな見方が必要になってくる。だからこそ、本稿では少し趣向を変えてユース年代を見る上での2つの新たな視点を提案してみたい。
必要なのは「上につながる選手の輩出」
「今日の試合に向けて、手倉森監督にこういうゲームをお見せしたいという準備をしてきました。U−21日本代表に自分たちのグループから一人でも加わってくれればいいと考えているので、手倉森監督のコメントが掲載されている新聞記事はすべてコピーをして選手に渡しています。その上で、選手には『手倉森監督も守備がベースと言っている。われわれがやっていることは決してバラバラではないし、ユニバーシアードが終わりじゃない』と言っています」
神川監督の発言からは、日韓戦での勝ち負けや大学というカテゴリー内での評価を超えた「上につながる育成」の意識がうかがえた。逆に言うと、ユース以下の育成年代ではまだまだこの視点が希薄であり、どうしてもカテゴリー内でのチームの勝ち負け、結果ばかりが追い求められる傾向にある。確かに、Jユースのように中高一貫での指導環境がなければカテゴリーをまたいで上を意識する指導は難しいとは思うが、指導者にとって一番の評価や目標は本来「上につながる選手を輩出すること」なのだ。