元「巨人キラー」が明かす攻略法 土肥義弘が推す“後継者”は?
横浜時代に「巨人キラー」として活躍した土肥義弘氏 【写真は共同】
「もったいない」と振らない場面を研究
まず、試合に入る時に「本塁打は付き物」だと考えていました。連勝していたころは、阿部(慎之助)選手が8番を打つこともあった強力打線。警戒し過ぎてランナーをためることはしないようにしていました。
そのためにまず考えたのが「最初の3球」をどう使うか。3球で1ボール、2ストライクにできれば、内角のボール球も使う余裕ができるので、そのために強い気持ちでストライク先行を心がけていました。
――そうは言っても怖さもあったと思いますが?
もちろん、あれだけの打者が並んでいますから怖さはありました。そこで、私は初球にストライクを取るために巨人打線を研究したのです。
バッターは一般的に、初球でタイミングをずらされると振らない傾向があります。「初球で狙っていない球を打つのはもったいない」と思うからです。そこで、巨人打線のタイミングの取り方に注目しました。彼らが何らかの理由で振らなかったシーンを自宅でも繰り返し見て、それが球種なのか、タイミングなのか……と見極めようとしました。
その結果、「この選手はこういう時は振らない」というデータを自分の中で持つことができたので、初球にストライクを取って、有利に勝負できるようになりました。
生命線だった「左打者へのシュート」
横浜に移籍してくるまでは左の中継ぎとして、左打者を抑えることでメシを食ってきていたので、その部分では自信はありました。
その中で巨人打線に効果的だったのは決め球のスライダーと、内角へのシュートでした。この内角へのシュートのコントロールに絶対の自信があったので、私はプロでやれたのだと思います。
この内角へのシュートはコントロールが重要です。ホームベースの上を通れば阿部選手や由伸選手の天才的な打撃で本塁打にされてしまい、打者に寄せ過ぎるとデッドボールになってしまいます。私はシュートで、ホームベースと打席のラインの間を真っすぐ通る軌道に投げ込む練習しました。キャンプでは投手はストライクを投げる練習をしますが、私はこのシュートをよく練習していました。
左投手vs.左打者だと、打者は内から真ん中に入ってくる球は打ちにきます。そこで真ん中に入ると思われた球が、打席のラインと平行に通ると、打っても凡打かファウルになります。私はこの内角のシュートと外角のスライダーのコンビネーションで抑えていました。
――では小久保裕紀さんらがいた右打者対策は?
右打者の方が大変でした。それは対戦のほとんどが東京ドームか横浜スタジアムで、右中間への打球が本塁打になる可能性が高かったからです。横浜スタジアムは浜風が右中間方向に吹きますし、東京ドームは空調の関係か分かりませんが、打球がよく伸びました。
外角にストレートを投げて軽く合わされたような打球が本塁打になると、ダメージが大きいです。そのため、内角をどう突くかを考えていました。
そういう意味で、当時の巨人で一番いやだったのは二岡(智宏)選手でした。内角は腕をたたんでレフト前へ、外角は腰が引けるような独特の打ち方で右中間へ……。打ち取るのがすごく難しい打者でした。