清宮監督、五郎丸が見た「今のワセダ」 ラグビー日本選手権

向風見也

ヤマハが早大を36対16で破る

早大・藤田(左)をかわすヤマハ・五郎丸。後輩のプレーに何を感じたのか? 【写真は共同】

 ラグビーシーズンを締めくくる日本選手権で大学生が社会人を下したのは、2006年2月12日が最後だった。
 東京は秩父宮ラグビー場で、早大がトヨタ自動車を28対24で撃破。当時の清宮克幸監督は、学生ラグビーが好きなオールドファンのみならず、全国の判官びいきな市民から大いに注目された。

 冬季オリンピックでいう2大会分の時を経て、その人は社会人の側にいた。トップリーグのヤマハを率いて、母校であり、かつて指揮を執った早大を36対16で制した。06年度から5季務めたサントリー監督を経て、現職につき3季目。「ワセダ、ナイスゲーム」と言い残した。

布巻を中心に食らいついた早大

 序盤、早大の前に出る守備が、ヤマハにいなされた。日本代表のセンター、マレ・サウらが角度にバリエーションをつけたパスを余裕を持ってつなぎ、前半2、12分とウイング田中渉太に連続トライを奪われた。敗者、後藤禎和監督は悔やむ。

「ワセダとしてはロータックル、ダブルタックルを心がけていた。1人目が低く入って相手の突進を止めて、2人目、と。ただ、突破されたシーンは1人目が高く入って弾かれていた。田中渉太に抜かれたところは、2枚、3枚で分厚く(守備網を敷いて)止めたかった」

 それでも、試合の質は保たれた。早大はフランカー金正奎副将、センター坪郷勇輝ら4年生が、しぶとく食らいついた。プロップ垣永真之介主将を軸に、スクラムはどうにか安定させた。3年生のフランカー布巻峻介は直線的なヒット、パス、キックと八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を示した。

早大・後藤監督「後半はよく戦えた」

 点差を離されて迎えた後半22分には、垣永、金のランで敵陣ゴール前に進む。対するヤマハのフルバック、日本代表の五郎丸歩が反則でシンビン(一時退場)処分を受けるなか、早大唯一の日本代表、フルバック藤田慶和がインゴールへ躍り込んだ。後藤監督はこうも言うのだった。
「自分たちよりでかく、強い相手にどう勝ちにいくか。そのためにはセットプレーをどうにか安定させる。相手の強みのラインアウトモールをどうにか止める。ディフェンスでは『ストップ・ザ・マレ・サウ』。あとはミスボールへの反応で、ミスをミスにしない……この4つをテーマに掲げました」

 モールでの失点や、マレ・サウ以外のキーマンであるフルバック五郎丸らに突破を許すなど思うようにいかない点はあった。それでも指揮官は「おおむね、うまくいった。特に後半はよく戦えた」と振り返っていた。

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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