演技を左右する大切なパートナー フィギュアスケートの「靴とブレード」

長谷川仁美

新調した靴が合わずに苦しむことも

華麗な演技に欠かせないスケート靴。大切なパートナーであるとともに、選手を苦しめることも…… 【写真は共同】

 今年1月の四大陸選手権に優勝した村上佳菜子(中京大)は、12月末に新調した靴が合わず、右足首が腫れていたという。また、今シーズンを飛躍の年と考えていたカナダの23歳ケビン・レイノルズは、シーズン前に新調した靴が合わず何足も試したものの、グランプリシリーズには間に合わなかった。

 フィギュアスケートのニュースを読んでいると、「今シーズンからブレードを新しくしました」という記事にたびたび出会う。フィギュアスケート選手たちにとってスケート靴は、大切なパートナーであるのに、選手を苦しめるものでもあるようだ。

 選手たちの履いているスケート靴は、驚くほど重くて硬く、靴とブレードを合わせると、片足で1キロ前後もある。スケート靴は、靴部分とブレード部分が別に売られていて、それぞれ好きなものを選んで留めて履いている。

靴部分のみで1足6〜7万円

 ではまず、靴の方を見てみよう。

 前述したように、靴は硬い。シングルやペアの靴とアイスダンスの靴でも作りが異なっており、アイスダンスの方は、より細かなフットワークができるよう、足首部分が曲がりやすくなっている。また、最近は軽量化された靴も増えているが、高橋大輔(関西大)のように、エッジワークを重視したために、ある程度の重さを求め、重い靴に変えている選手もいる。

 トップ選手たちは、欧米メーカーのものを履いているのだが、1足ずつ手作りのため、同じメーカーの同じタイプの靴を用意しても、靴ごとにほんの少しずつ違いがあり、その違いに悩まされるという。靴の内部を電子レンジのようなもので温めて、そこに足を入れ、インナーを足型にフィットさせるタイプの靴も出てきているが、それでも履いていくうちに靴の皮に癖が出てくる。1足もぴったりするものが見つからないのに、予備まで用意しておくことはほぼ不可能だ。その上、こうした靴は(靴のみで)6〜7万円程度と安くはない。

 せっかくフィットしたと思っても、毎日の練習で酷使された靴は、特に足首部分が軟らかくなってしまって(とはいっても、選手ではない人にとっては十分硬く感じられる)、数カ月〜半年で新しい靴に変えなくてはならないのもまたひと苦労だ。

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著者プロフィール

静岡市生まれ。大学卒業後、NHKディレクター、編集プロダクションのコピーライターを経て、ライターに。2002年からフィギュアスケートの取材を始める。フィギュアスケート観戦は、伊藤みどりさんのフリーの演技に感激した1992年アルベールビル五輪から。男女シングルだけでなくペアやアイスダンスも国内外選手問わず広く取材。国内の小さな大会観戦もかなり好き。自分でもスケートを、と何度かトライしては挫折を繰り返している。『フィギュアスケートLife』などに寄稿。

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