充実のパナソニック、王座奪還なるか トップリーグ・プレーオフ展望
世界トップレベルの指導を加えたパナソニック
トライを決めるパナソニック・北川。充実の戦力で優勝を狙う 【写真は共同】
昨年8月から1月までのレギュラーシーズン、確かな結果を出したのがパナソニックだ。前半戦の成績上位8チームによるセカンドステージ・グループAでは、7戦全勝で首位。前身の三洋電機時代から通算して7季連続のプレーオフで、3季ぶりの優勝を狙う。
堅守速攻で鳴らす。シーズン中の総タックル数は1992回と4チーム中最多である。今季は、強豪国仕込みの新要素で看板のスタイルを進化させた。
春先から就任のアシュリー・ジョーンズストレングス&フィットネスコーチは、それぞれの年齢や体調に合わせた短期集中型の肉体強化メニューを個別に提示する。前主将のセンター霜村誠一に「これをやれば強くなるんだという彼の自信が伝わる。今はフィジカル面でみんな自信を持っている」と言わしめた。
さらに、前オーストラリア代表監督のロビー・ディーンズ氏もスポットコーチとして定期的に来日。前に出る守備システムの落とし込みに加え、プレーヤーの技術開発にも力を注いだ。ウイング山田章仁は、ディーンズ氏とともにプレー映像を観てボールに多く触るための具体的手法を学び、リーグ2位の11トライ、大外の選手としては異例のコンタクト数(チーム2位の120回)という数字を残した。
スーパーラグビーの経験を生かす堀江、田中
日本人も実力者ぞろいだ。フッカー堀江翔太主将とスクラムハーフ田中史朗は昨年から南半球トップのスーパーラグビーに参戦し、その経験値をパナソニックに落とし込む。チームで一番多いシーズン通算148本のタックルを放った新人プロップ、稲垣啓太はこう証言する。
「堀江さんは細かいところにも目を配り、何でも『まぁ、いいか』と放ってはおくことはしない。史さん(田中)はプレーのクオリティーが高く、僕らもそれに引っ張られて『もっとこうできないか』と話すことが増えました」
2月中旬からの日本選手権は、日本人スーパーラグビープレーヤーが欠場する可能性が高い。プレーオフは、最高の布陣で王座を狙うラストチャンスか。
サントリー「攻めることが僕らのスタイル」
ボールを持つ機会が多いスクラムハーフ、スタンドオフの周りに複数のランナーが立つ「シェイプ(陣形)」を絶えず形成、局面を重ねるなかで相手守備網を切り裂きスコアを量産する。2010年度からそんな攻撃文化を醸成し、昨季は無敗でトップリーグと日本選手権の2冠に輝いた。今季は選手個々の身体を大きくし、若手では新人のウイング塚本健太が10トライと台頭した。クラブとして後退の色はない。
しかし、今季はすでに2つの黒星を喫している。特に12月14日、秩父宮でのセカンドステージ第3節ではパナソニックに13―42と完敗。いくらテンポを上げても、向こうのタックラーに進路を阻まれた。
「力の差はなくなっていますし、僕らもここにいない可能性があった」。8季連続のプレーオフ出場を決めた後、就任2年目の大久保直弥監督はこう話した。
「例えばパナソニックさんとの試合。相手は300回以上もタックルに行っている。今までだったらそれだけタックルさせていれば、どこかにほころびが出たけど……」
バーンズら大物が各チームに入ってリーグ全体の質が高まるなか、「サントリーのシェイプ」は各クラブの主要研究対象となっている。王者とて、同じように戦って同じように勝てるほど甘くはない。もっとも、8季連続出場のプレーオフに向け、指揮官はこうも続けるのである。
「点を取られないやり方はいくらでもある。それだけ(リスクを冒して)攻めなければいい。でも、攻めることが僕らのスタイルだから」
精度の高いシェイプアタックを繰り出す。シェイプアタックのためにボール保持率を高める。ボール保持率を高めるのに必要な項目を再点検する……。セカンドステージ2位のサントリーは、そういう態度で2日の準決勝第2試合に挑むのだ。