「涌井はもっと評価されて良い」吉井理人が思うダルビッシュと涌井の現状

ベースボール・タイムズ

吉井氏が高校時代からのライバル、ダルビッシュと涌井(右)について現状と今後、そして涌井復活のヒントを語った 【写真は共同】

 1986年生まれ、同年齢の希代の投手、ダルビッシュ有と涌井秀章――。東北高と横浜高の一員だった時から2人はライバル関係だった。ともにドラフト1位でプロ入りすると、今度は北海道日本ハムと埼玉西武のエースとしてパ・リーグの舞台で幾度も相まみえ、激しい争いを続けた。

 ダルビッシュは2011年に18勝6敗、防御率1.44の自己最高成績を残すと、同年オフにテキサス・レンジャーズに移籍。メジャー2年間で29勝を挙げるなど進化を続ける一方で、涌井は11年に9勝12敗と5年連続で続けていた2ケタ勝利を逃すと、翌12年にはリリーフへの配置転換を経験。先発復帰を狙った13年もシーズン途中で先発ローテーションを外れ、リリーフとしての登板が続いた。一定の結果は残しているが、エースとしては停滞感が漂い、今オフ、FA権を行使し、千葉ロッテに移籍した。

 今年でともに28歳を迎える2人のエースの現状と今後は? また、涌井の完全復活へのヒントとは? 現役時代に日米7球団で計121勝を挙げ、引退後も日本ハムの投手コーチとして手腕を発揮した吉井理人氏に話を聞いた。

「涌井、そんなに悪いとは思わない」

第2回WBCではリリーフ登板したダルビッシュが韓国との決勝で同点となるタイムリーを浴びた。吉井氏は「内容としては良くなかった」と評し、リリーフの難しさを説いた 【写真は共同】

――ダルビッシュ有投手は投手コーチ時代の教え子ですが、どのような特徴を持った投手だと感じていますか? また、どのような指導をされましたか?

 もう見ての通り、何もかもがすごい投手。その中でも好不調の波が少ないというのは彼の特徴ですね。指導者の僕としては何もしていない、ただ見守っていただけです(笑)。1軍のピッチャーというのは、それぞれ自分のものを持っているし、余計なことを言わずに見守ってあげた方が良い結果が出る気がします。その中でもダルビッシュ投手は、何でも自分でできる子でした。僕はコンディション的に体が疲れていないか、無理していないかというのを見るだけでしたよ。いろいろな面で“プロ”の投手でしたね。

――日本ハムがリーグ優勝した09年に涌井投手が沢村賞を受賞しています。涌井投手の印象は?

 もちろん、すごいピッチャーだと思って見ていました。僕自身、09年は自分のチームのことで精いっぱいでしたけどね(苦笑)。最近は「悪い、悪い」と言われていますけど、僕自身はそんなに悪いとは思わない。その前がすご過ぎただけで、リリーフでもちゃんと結果は残していますからね。

――涌井投手は12年の開幕直後からリリーフでの登板が多くなりました。吉井さんも現役時代は先発とリリーフの両方を経験していますが、配置転換による難しさなどはありましたか?

 僕の場合はリリーフから先発だったこともあったし、そこまで苦労はしなかったですね。たぶんリリーフから先発より、先発からリリーフに移る方が難しいと思います。高校生の時はみんな先発ピッチャーですし、先発はみんなできる。その中でリリーフに向いている投手もいる。先発しかできない投手や先発とリリーフをできる投手はいるけど、リリーフができて先発ができない投手はいないと思います。

――先発からリリーフに移る場合の“難しさ”というのは?

 まずリリーフは自分でゲームをつくれないですからね。先発ピッチャーは試合の最初からマウンドに上がって自分でゲームの流れに乗っていけますけど、リリーフはすでに出来上がった流れの中にいきなり入れられて、そこでバシッと結果を残さないといけない。先発は立ち上がりに失点してもそこから盛り返すチャンスがありますが、リリーフは失点したらそこで代えられますからね。特に抑えとなると実力がないといけない。並みの投手じゃできないですよ。

――逆にリリーフから先発に移る際には、スタミナ面だったり、ペース配分だったりという部分が心配になると思います。

 よく言われますけど、リリーフ投手だってプロですから必要なスタミナは持っていますよ。「リリーフ“降格”」ってこともよく言われますが、その言葉はどうかなと思います。リリーフの方が難しいと思いますし、本当に専門職だと思います。先発は多く球数は投げますが週に1回、リリーフは毎日ですから。リリーフの方が仕事量が多いですよ。しかし、先発の方が注目されますし、給料も上がりやすい。僕は、先発ピッチャーは日本一、いや世界一、楽な仕事だと思っていますよ(笑)。

――ダルビッシュ投手も09年のWBCで抑えを任されたことがありましたね。

 そうでしたね。でも、うまくいかなかったですよね。結果的には優勝できましたけど、内容的には良くなかった。やっぱりリリーフは難しい。特にダルビッシュ投手みたいに1試合トータルで考えてバッターをやっつけたいタイプの投手はね。そう考えると、「リリーフ・涌井」はもっと評価されて良いと思います。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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