本田、トップ下で躍動し初ゴール チームに落ち着きを与え信頼を勝ち取る
格下との対戦で新戦力をテスト
かくして“トラゲッタトーレ(橋渡し役)”マウロ・タソッティ監督代行が指揮する試合は、このコッパ・イタリアの1試合のみとなってしまった。その中でタソッティは「アレグリだったらこうしたに違いない」というシステムと布陣を組んだ。相手は3回戦でジェノアを破ったとはいえ、比較的対戦相手に恵まれて勝ち進んだセリエBの12位(第21節終了時点)。格下との対戦ということで、カカやクリスティアン・サパタを始めとした主力を休ませるとともに、故障から回復したジャンパオロ・パッツィーニ、そして新戦力のアディル・ラミと本田圭佑のテストに当てたのだ。
得点に絡み役割を果たす
裏を返せば、首脳陣も本田をこういうキャラクターの選手であるというふうに判断をしていたということだ。ならばこの試合で本田に課せられたテスト内容は、実戦を通してチームに慣れつつ、“危険性”を再びアピールできるかということであっただろう。その結果は1ゴール、先制点の場面ではアクションの起点にもなった。本田本来のプレーを披露し、得点に絡むという自分の役割をきっちりと果たしてみせた。
デビュー戦とは異なるトップ下でプレー
守備のカバーリングを大事にしたアレグリ前監督は、トップ下やサイドの選手をワイドに開かせ、どちらかといえば3トップ気味のシステムで戦わせていた。しかしこの日の2トップ、ロビーニョもパッツィーニもそれほど外には開かず、トップ下も交えてコンパクトな三角形を作るような位置を取る。
サッスオロ戦でも右サイドから中へと臨機応変に絞り、パッツィーニやマリオ・バロテッリからのリターンをもらおうと詰めていた本田にとっては、持ち味が発揮し易い形が用意されていたと言える。実際に試合開始からほどなく、このトライアングルは小気味よい連係でチャンスを作った。カウンターとなった前半7分、パッツィーニからの浮き球のパスを近くで受けた本田は、そのままノートラップで前方のロビーニョへとパスを出す。正確につなぐとともに、展開のスピードを一段上げた好プレーだったが、ロビーニョはシュートを打ち切れなかった。
ただ序盤、本田が攻撃に絡めたシーンは少なめだった。格下とはいえ若手中心で構成され、元イタリアU−21代表監督の知将デビス・マンジャが指揮する(ただしこの日は出場停止でベンチに入らず)スペツィアは、格下とはいえかなりタフなプレスを掛けて来る。そのプレスを前にミラン攻撃陣も焦ったのか、パスを出さず単独で縦に急ぐ傾向に走っていた。ロビーニョもパッツィーニも本田を無視して強引に行っては、雑なプレーでチャンスを潰していた。