本田、トップ下で躍動し初ゴール チームに落ち着きを与え信頼を勝ち取る

神尾光臣

格下との対戦で新戦力をテスト

コッパ・イタリアで初先発した本田。トップ下でプレーし、初ゴールを決めるなど結果を残した 【Getty Images】

 ミランの監督を解任されたマッシミリアーノ・アレグリの後任候補としてうわさになっていたクラレンス・セードルフは、14日に現役引退とボタフォゴ(ブラジル)からの退団、そしてミランの監督就任を発表した。彼はリオデジャネイロから飛行機に乗り込み、ミラノへ到着。その足で現地時間18時にキックオフとなったコッパ・イタリアのラウンド16、スペツィア戦の観戦に訪れたのである。

 かくして“トラゲッタトーレ(橋渡し役)”マウロ・タソッティ監督代行が指揮する試合は、このコッパ・イタリアの1試合のみとなってしまった。その中でタソッティは「アレグリだったらこうしたに違いない」というシステムと布陣を組んだ。相手は3回戦でジェノアを破ったとはいえ、比較的対戦相手に恵まれて勝ち進んだセリエBの12位(第21節終了時点)。格下との対戦ということで、カカやクリスティアン・サパタを始めとした主力を休ませるとともに、故障から回復したジャンパオロ・パッツィーニ、そして新戦力のアディル・ラミと本田圭佑のテストに当てたのだ。

得点に絡み役割を果たす

 イタリアデビューとなったセリエAの第19節・サッスオロ戦では強烈なシュートをポストに当てるなどインパクトを残し、地元メディアからも高い評価を勝ち取っていた本田。デビュー戦の本田のパフォーマンスにタソッティ監督代行も満足しており、試合前の会見では「彼は技術と、ゴール前25メートルのエリアでの危険性を見せてくれた」と語っていた。

 裏を返せば、首脳陣も本田をこういうキャラクターの選手であるというふうに判断をしていたということだ。ならばこの試合で本田に課せられたテスト内容は、実戦を通してチームに慣れつつ、“危険性”を再びアピールできるかということであっただろう。その結果は1ゴール、先制点の場面ではアクションの起点にもなった。本田本来のプレーを披露し、得点に絡むという自分の役割をきっちりと果たしてみせた。

デビュー戦とは異なるトップ下でプレー

 サッスオロ戦に途中出場した際は、チームが4失点を喫し、大変なビハインドを負っていた。2点を取り返すため、前線の枚数を増やして攻撃的にいく必要があったため、本田は主に右サイドへ張ることを命じられていた。だがこの日のシステムは4−3−1−2、本田は単独のトップ下として、2トップの後ろでプレーを命じられた。

 守備のカバーリングを大事にしたアレグリ前監督は、トップ下やサイドの選手をワイドに開かせ、どちらかといえば3トップ気味のシステムで戦わせていた。しかしこの日の2トップ、ロビーニョもパッツィーニもそれほど外には開かず、トップ下も交えてコンパクトな三角形を作るような位置を取る。

 サッスオロ戦でも右サイドから中へと臨機応変に絞り、パッツィーニやマリオ・バロテッリからのリターンをもらおうと詰めていた本田にとっては、持ち味が発揮し易い形が用意されていたと言える。実際に試合開始からほどなく、このトライアングルは小気味よい連係でチャンスを作った。カウンターとなった前半7分、パッツィーニからの浮き球のパスを近くで受けた本田は、そのままノートラップで前方のロビーニョへとパスを出す。正確につなぐとともに、展開のスピードを一段上げた好プレーだったが、ロビーニョはシュートを打ち切れなかった。

 ただ序盤、本田が攻撃に絡めたシーンは少なめだった。格下とはいえ若手中心で構成され、元イタリアU−21代表監督の知将デビス・マンジャが指揮する(ただしこの日は出場停止でベンチに入らず)スペツィアは、格下とはいえかなりタフなプレスを掛けて来る。そのプレスを前にミラン攻撃陣も焦ったのか、パスを出さず単独で縦に急ぐ傾向に走っていた。ロビーニョもパッツィーニも本田を無視して強引に行っては、雑なプレーでチャンスを潰していた。

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著者プロフィール

1973年9月28日、福岡県生まれ。東京外国語大学外国語イタリア語学科卒。97年の留学中にイタリアサッカーの熱狂に巻き込まれ、その後ミラノで就職先を見つけるも頭の中は常にカルチョという生活を送り、2003年から本格的に取材活動を開始。現在はミラノ近郊のサロンノを拠点とし、セリエA、欧州サッカーをウオッチする。『Footballista』『超ワールドサッカー』『週刊サッカーダイジェスト』等に執筆・寄稿。まれに地元メディアからも仕事を請負い、08年5月にはカターニア地元紙『ラ・シチリア』の依頼でU−23日本代表のトゥーロン合宿を取材した。

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